中小企業と財務諸表(その4)

2024.03.26

企業支援

財務諸表とは、会社がその活動に伴う財務状況を明らかにするために、会計年度1年毎に作成される一連の決算書類のことを言い、会社法上では、損益計算書(Profit & Loss Statement、P/Lと略称)、貸借対照表(Balance Sheet、B/Sと略称)、株主資本等変動計算書および個別注記表から成ります。なお上場企業の場合は、金融商品取引法の遵守が義務付けられますので、キャッシュフロー計算書および附属明細表が加わります。
起業からまもない中小企業のトップにとって、財務諸表・決算書はどういう意味をもつか、どう係わっていくべきか、提言も含めお話ししたいと思います。

1.財務諸表の作成(1正しい財務諸表をつくるには 2財務諸表を役立てるには)
2.財務諸表の活用(1事業計画の作成 2事業計画と決算の対比・レビュー 3会社業績の分析 4ステイクホルダーへの開示)
3.財務諸表の個別の役割(1損益計算表(P/L) 2貸借対照表(B/S) 3株主資本等変動計算書 4個別注記表 5キャッシュフロー表(資金繰り表))(以上前号まで)
4.財務諸表を用いた分析(1収益性分析 2安全性分析 3生産性分析)
5.最後に

4.財務諸表を用いた分析

4-1.収益性分析
“稼ぐ力はどれほどか、利益を出しているか、効率性はどうか“ の分析になります。
売上高総利益率、売上高営業利益率、及び売上債権回転期間は、必ずおさえておきましょう。
加えて、構成比(売上を100として各勘定科目を数値化)を設け会社の収益構造を把握すること、前月比・前年同期比・前年比を設け、各勘定科目、下記の各指標の成長率もチェックしておくことをおすすめします。
■ 売上高総利益率(%): (売上総利益)÷(売上高)×100
企業が主な業務において稼ぐ力の源をチェックするための指標となります。
業界の取り引きに関する慣例、競合状況などの要因によりも左右されます。
産業特性も踏まえ、利益率の向上に努めましょう。
■ 売上高営業利益率(%): (営業利益)÷(売上高)×100
企業が営業活動によって得た利益を表します。
この指標が高いということは、提供している商品やサービスの価値が高く、営業活動に係る費用に対して効率的な営業ができているということになります。
■ 売上高経常利益率(%): (経常利益)÷(売上高)×100
売上高営業利益率に比して良い場合は営業外収支がプラス(受取・支払金利の差がプラス、受取配当金がある、有価証券売却・評価益がでた等)、逆に悪い場合は営業外収支がマイナス(受取・支払金利の差がマイナス、有価証券売却・評価損がでた等)となります。金利差発生の要因を理解・容認し、差異が大きい場合には事業計画にも盛り込んでおきましょう。
■ 売上高当期純利益率(%): (当期純利益)÷(売上高)×100
売上高経常利益率に比して、特別損益(固定資産売却益・同損など)の有無が差を生みます。原因を把握しておくのが良いでしょう。
■ ROA(総資産利益率)(%): (当期純利益)÷(総資産)×100
企業に投下された資本がどれだけ効率よく利用されたかをあらわします。
■ ROE(株主資本利益率)(%): (当期純利益)÷(株主資本)×100
株主が拠出した資本がどれだけ効率よく利用されたかをあらわします。投資家が出資を検討する際に必要となる指標です。
■ 総資産回転率(回転): (売上高)÷(総資産)
総資産を用いて、どれだけの売上高を得たかを示します。回転数が多いほど効率的といえます。売上高の増加、不要在庫削減などによる資産の削減により回転数は高まります。
■ 売上債権回転期間(月): (売上債権)÷(売上高÷12か月)
売上高のうち何か月分が売上債権として残っているかを示します。
回転期間が短いほど効率的であり、逆の長い場合は不良債権発生のリスクが高まります。