法律改正2024年(その4)

2024.03.18

法的支援

2024年に施行される事業者が知っておくべき法律改正情報について概説します。
1.労働条件の明示          9.電子帳簿保存法法
2.時間外労働の上限規制       10.不当景品類及び不当表示防止法
3.健康保険・厚生年金保険      11.意匠法
4.裁量労働制            12.商標法
5.障害者雇用率の引き上げ(前号まで)13.不正競争防止法
6.障害者差別禁止法         14.不動産登記法
7.フリーランス保護新法       15. 民事訴訟法
8.労働安全衛生法          16.民法                   

6.障害者差別禁止法(2024年4月1日施行)
事業者の合理的配慮に関する法的義務が定められました(改正前は努力義務)(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律8条2項)。
①合理的配慮義務が発生するための要件は以下の通りです。
(a)障害者からの現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(令和5年3月14日閣議決定、令和6年4月1日施行)(「ガイドライン」)では、言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)によることも想定されています。また、障害の特性等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が、本人を補佐して行う意思の表明も含むとされています。
(b)社会的障壁除去の実施に伴う負担が過重でないこと
ガイドラインでは、事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)、実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的に判断するとされています。また、過重な負担になると判断した場合には、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましいとされています。
②障害者の権利に関する条約2条によれば、合理的配慮とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」とされています。合理的配慮の具体例については、総務省の公表している「合理的配慮等具体例データ集」が、「障害の種別」(全般・視覚障害・聴覚言語障害・盲ろう・肢体不自由・知的障害・精神障害・発達障害・内部障害難病等)及び「生活の場面」(行政・教育・雇傭就業・公共交通・医療福祉・サービス・災害時)に区分して具体例を紹介しており、参考になります。
(https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/index.html)
③障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律5条は「行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。」と定めています。環境の整備は、不特定多数の障害者向けに事前的改善措置を行うものであるのに対し、合理的配慮は、環境の整備を基礎として、その実施に伴う負担が過重でない場合に、特定の障害者に対して個別の状況に応じて講じられる措置という関係にあります。
ガイドラインでは、合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る例を挙げています。