中小企業と財務諸表(その1)

2024.02.9

企業支援

財務諸表とは、会社がその活動に伴う財務状況を明らかにするために、会計年度1年毎に作成される一連の決算書類のことを言い、会社法上では、損益計算書(Profit & Loss Statement、P/Lと略称)、貸借対照表(Balance Sheet、B/Sと略称)、株主資本等変動計算書および個別注記表から成ります。なお上場企業の場合は、金融商品取引法の遵守が義務付けられますので、キャッシュフロー計算書および附属明細表が加わります。
起業からまもない中小企業のトップにとって、財務諸表・決算書はどういう意味をもつか、どう係わっていくべきか、提言も含めお話ししたいと思います。

1.財務諸表の作成(1正しい財務諸表をつくるには 2財務諸表を役立てるには)
2.財務諸表の活用(1事業計画の作成 2事業計画と決算の対比・レビュー 3会社業績の分析 4ステイクホルダーへの開示)
3.財務諸表の個別の役割(1損益計算表(P/L) 2貸借対照表(B/S) 3株主資本等変動計算書 4個別注記表 5キャッシュフロー表(資金繰り表))
4.財務諸表を用いた分析(1収益性分析 2安全性分析 3生産性分析)
5.最後に

1. 財務諸表の作成

1-1.正しい財務諸表をつくるには
財務諸表は、① 仕訳(企業の毎日の全ての取引を借方/貸方に分類し、発生日・取引内容・金額と該当する勘定科目を記載する作業)、② 総勘定元帳への転記(仕訳を勘定科目ごとにまとめる作業)、③ 試算表の作成(勘定科目別に作成された総勘定元帳の合計や残高を集約)
を経て作成されます。
財務諸表は、原則として全ての企業にその作成と税務署や株主などへの適切な開示が義務づけられていますので、当然正確なものが求められます。 JDL、弥生会計、勘定奉行、MJS、マネーフォワード等々(順不同)財務諸表作成ツールはテレビCMで流れるほど一般化していますが、スタートの仕訳という作業と出来上がった財務諸表のチェック・修正・評価は簿記や経理を経験したもので無ければ簡単ではありません。 自社で経験者をかかえているので無ければ、当初は会計士・税理士などのプロにその作成を委託するのが良いでしょう。

1-2.財務諸表を役立てるには
企業のトップは会社の運営に当り、月次の財務諸表をチェックし、これらの項目の達成度合いを把握する必要があります。(詳細は後述します。)しかしながら財務諸表の作成を外部に委託した場合、出来上がってくるタイミングも遅くなりがちです。委託先の仕事量、委託料の支払額にもよりますが、早くて翌月末以降でしょう。上場企業の場合は翌月第1週には財務諸表を完成させます。財務諸表のチェックは早いに越したことはないのです。
会社の成長性、運営資金事情にもよりますが、どこかのタイミングで経験のある社員を雇用し、自社社員が作成ツールを用いながら財務諸表を作成する体制に移行する、かつ、仕訳に先立つ事業報告の早期報告など財務諸表作成カレンダーを作成し早期作成のルール作りをするのが良いでしょう。