法律改正2024年(その1)

2024.02.2

法的支援

2024年に施行される事業者が知っておくべき法律改正情報について概説します。
1.労働条件の明示          9.電子帳簿保存法法
2.時間外労働の上限規制       10.不当景品類及び不当表示防止法
3.健康保険・厚生年金保険      11.意匠法
4.裁量労働制            12.商標法
5.障害者雇用率の引き上げ      13.不正競争防止法
6.障害者差別禁止法         14.不動産登記法
7.フリーランス保護新法       15. 民事訴訟法
8.労働安全衛生法          16.民法                   

1.労働条件の明示(2024年4月1日施行)
①使用者が労働契約を締結する場合に労働者(有期・無期を問わない。)に対し明示しなければならない事項として、就業場所及び従事すべき業務に加えて、「就業場所及び従事すべき業務の変更の範囲」が追加されます(労働基準法施行規則5条1項1の3号)。従って、将来の配置転換等によって変わり得る就業場所及び業務の範囲を明示することが必要になります。
②使用者が有期労働契約を締結又は更新する場合に有期労働者に対し明示しなければならない事項として、「通算契約期間又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合の当該上限」が追加されます(労働基準法施行規則5条1項1の2号)。従って、更新上限(通算契約期間又は更新回数の上限)の有無及び内容の明示が必要になります。なお、有期労働契約の締結後の契約変更又は更新に際して通算契約期間又は更新回数について上限を定め又は引き下げる場合は、予め、その理由を労働者に説明しなければならないとされています(有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準(「基準」)1条)。
③使用者が有期労働者が無期転換申込み(*)をすることができることとなる有期労働契約を締結する場合に有期労働者に対し明示しなければならない事項として、「無期転換申込みに関する事項及び無期労働契約の労働条件」(労働基準法施行規則5条1項1号、1の3号ないし11号)が追加されます(労働基準法施行規則5条5項)。但し、労働基準法施行規則5条1項4号の2ないし11号に定める事項については、定めのある場合に限ります。従って、無期転換申込権が発生する更新のタイミング毎に無期転換を申込むことができる旨及び無期転換後の労働条件を明示することが必要になります。無期転換申込みに関する事項及び無期労働契約の労働条件のうち労働基準法施行規則5条1項1号、1号の3ないし4号に定める事項については、労働者に対する書面の交付が必要です(労働基準法施行規則5条6項)。なお、無期労働契約の労働条件を明示する場合は、労働契約法3条2項の趣旨(労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする)を踏まえて他の通常の労働者とのバランスを考慮した事項(労働基準法施行規則5条1項に定めるものを除く、業務内容、責任の程度、異動の有無範囲等)について、有期労働者に説明するよう努めなければならないとされています(基準5条)。
(*)有期労働契約の通算契約期間(一定の空白期間がある場合はそれ以前の契約期間を除く。)が5年を超える労働者は、使用者に対し、現行有期労働契約の契約期間の満了日までに満了日以降の無期労働契約の締結の申込みをすることにより、現行有期労働契約と同一の条件(契約期間を除き、特約のある事項を除く。)で無期労働契約を締結したものと看做されます(労働契約法18条)。
▲参考:労働基準法5条1項
一 労働契約の期間に関する事項
一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
七 安全及び衛生に関する事項
八 職業訓練に関する事項
九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
十 表彰及び制裁に関する事項
十一 休職に関する事項