法律改正2023年チェックリスト(その4)

2024.01.19

法的支援

2023年に施行された法律改正を簡単にまとめました。コンプライアンスの観点から、見落としがないかどうかを再度チェックしてください。
1.労働基準法
2.育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
3.民法
4.不動産登記法
5.相続土地国庫帰属法
6.個人情報の保護に関する法律
7.消費者契約法(以上前号まで)
8.消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律
9.消費税法
10.企業内容の開示に関する内閣府令
11.景表法に基づく内閣府告示
12.特定商取引法

8.消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律({消費者裁判手続特例法})(2023年6月1日施行)
消費者裁判手続特例法(2016年10月1日施行)は、国から認定された特定適格消費者団体が原告となり、事業者の共通義務(相当多数の消費者に対する金銭支払義務)を確認する第一段階(共通義務確認訴訟)と消費者の債権を個別に確定する第二段階(簡易確定手続)の手続から構成されています。
適用範囲が拡大され、共通義務確認の対象となる損害として、基礎的事実関係が共通で且つ(i)財産的請求と共通する事実上の原因に基づいて併せて請求される場合又は(ii)事業者の故意により生じた場合の慰謝料が追加され(3条2項)、対象となる被告として、事業監督者及び被用者(故意重過失ある者に限る。)が追加されました(3条1項、3項)。
和解が柔軟化され、共通義務確認訴訟における和解として、事業者の責任(共通義務)を認める和解だけでなく、解決金を支払う和解等の様々な和解が可能になりました(11条)。
手続面では、共通義務確認訴訟が係属する裁判所が適格消費者団体の申立によりその疎明に基づいて事業者等に対し消費者情報を開示することを命ずる(保全開示命令)ことができるようになり(9条)、簡易確定手続申立団体の対象消費者に対する個別通知の記載事項が簡略化され(27条2項)、事業者等は簡易確定手続申立団体の求めにより対象消費者に対し個別通知をしなければなくなりました(28条)。
特定適格消費者団体の負担を軽減するため、特定適格消費者団体(71条の認定を受けた適格消費者団体)を支援する法人(消費者団体等支援法人)を認定する制度が導入され(98条ないし113条)。消費者団体支援法人が特定適格消費者団体の通知や行政の公表等を受託することができるようになりました。
その他、簡易確定手続の申立の柔軟化(和解に応じた申立、申立期間の伸張等)(15条、16条)、簡易確定手続の事件記録の閲覧請求権者の明確化(54条)、特定認定の有効期間が3年から6年への延長(75条)、特定適格消費者団体と適格消費者団体その他の関係者との連携協力努力義務(81条4項)が定められました。

9.消費税法(2023年10月1日施行)
インボイス制度(商品などに課されている消費税率や消費税額など、法令が定めた内容を明記した書面(適格請求書=インボイス)を交付する制度)が導入されます。インボイス制度により、インボイスではない請求書では仕入税額控除が受けられなくなります。仕入税額控除とは、生産、流通などの各取引段階で二重、三重に税がかかることのないよう、課税売上に係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を控除し、税が累積しない仕組みです。課税売上高が1億円以下である事業者においては、インボイス制度の施行から6年間、1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも帳簿のみで仕入税額控除が可能です。返還インボイス(適格返還請求書)の交付については、すべての事業者において、少額(1万円未満)の値引き等の対応は不要です。
仕入税額控除に対応するためは、請求書・領収書・納品書・レシートが、適格請求書(インボイス)の要件を満たしている必要があります。インボイスの発行事業者となるためには、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、「適格請求書発行事業者」となる必要があります。ンボイス制度施行後は発行側も受領側もインボイスを7年間保存する必要があり、書類の保存数はさらに増加します。データとして保存する場合は電子帳簿保存法に対応する必要があるため、今から電子帳簿保存法に対応しておくことが推奨されます。