働きやすく働き甲斐のある組織づくりに向けて(その1)

2023.11.27

企業支援

ヒトは生活や仕事をする上で、物理的な接触刺激がないと安心できないし活力が生まれないということを、ビジネスとは少しかけ離れた話から始めたい。

序論(本号)
課題1:人権DDを手順通りに形を整える、ことに汲々となっていないか?
課題2:本来的に、PDCAサイクルを回す仕組みになっているか?
課題3:仕事への意欲が湧く仕組みがビルトインされているか。(全従業員が「働きやすさ」と「働き甲斐」の両方を感じる組織になっているか?)
まとめ:職場風土の改善に向けて

序論:皆さんは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が、線虫を使った老化メカニズム研究をしていることをご存じだろうか?おとぎ話の世界では、浦島太郎が竜宮城から故郷に戻ってくると、友人知人はとっくに死んでしまい、自分も玉手箱を開けたとたん一気に老爺になってしまう話がある。しかしながら、宇宙空間ではリアルな話となる。アインシュタイン博士の相対性理論から「速く移動するほど、時間の進み方が遅くなる」ことは実証されており、実際、地球時間より高速で移動するGPS衛星は、常に時間を補正しながら動いている。
JAXAの研究をザックリと説明すれば、宇宙船内に滞在させた線虫と同一条件の地球の線虫の老化物質の生成変化を比べることで、無重力状態では感覚神経系が不活性化し老化速度が遅くなる、という仮説を導いている。逆に言えば、無重力の宇宙空間では線虫に接触刺激を与えないと、動きが全く活性化せずに元気が出てこないらしい。似たような例として、無重力空間の宇宙船内で寝る際には、意図的に枕や布団をゴムか何かで身体にくくりつけ接触した形で入眠しないと安眠しにくい、という。確かに、右側を下にしてとか自分用の枕でないと安心して眠りにつけないという人の話は、誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。

また年寄りくさい話で恐縮だが、友人の中に、老化防止のためにダンス教室に通い始めた人がいる。歩く姿勢が良くなる、心肺機能が高まる、運動量が半端ない、といった理由から始めたそうだが、最近、こうした理由に加えて新たな発見があったそうだ。それは女性パートナーと手をつなぐ腰に手を回すというダンスの基本所作にあるという。ダンスの女性講師から、「そんなに遠慮しないで!もっとしっかり握る!手の位置はココ!」など叱咤激励の指導を受けると、パートナーに対して、大学生時代の合コンのような緊張感と(変な意味ではなく)ワクワク感を感じて精神的にも張りが出て随分と若返る、と嬉しそうに語るのだ。ヒトは知的刺激だけでなく、もっと根元的に生物的な接触刺激を受けることが、元気の秘訣ということだろう。

最近、世間の常識を大きく逸脱した人権に関する事件が、芸能界や自動車整備業界で起きている。こうした業界に限らず、教育業界など様々な分野で人権無視のケースが頻発しているため、政府を始めとして各業界で、人権擁護の姿勢を明確にする動きが活発になってきている。
特に、人権デューデリジェンス(人権DD)という新しい人権擁護ガイドラインを導入する動きが顕著である。人権DDとは、会社としての人権方針を策定公表し、苦情処理メカニズムを制定した上で、人権DDの実施(人権リスクの特定~予防措置~モニタリング~情報開示)を展開するものであり、至極真当な手続きである。ここからは、その動きを歓迎しながらも、見落とされがちと思われる本質的な課題について思うことを、述べてみたい。