AI等を用いた法的サービスと弁護士法72条の関係(その2)

2023.11.6

法的支援

近年、AI等を用いて契約書等の作成・審査・管理業務を一部自動化することにより支援するサービス(「本件サービス」)が普及しつつあります。他方で、弁護士法72条は非弁護士による法的サービスの提供を禁止しているため、両者の関係が問題になります。この点について、2023年8月、法務省から「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法72条との関係について」(「ガイドライン」)が公表されましたので、その概要を以下ご説明します。

1.弁護士法72条とは
2.弁護士法72条の趣旨(以上前号)
3.ガイドライン
(1)報酬を得る目的
(2)法律事件性
(3)法律事務性①契約書等の作成業務を支援するサービスについて
①契約書等の作成業務を支援するサービスについて
②契約書等の審査業務を支援するサービスについて
③契約書等の管理業務を支援するサービスについて
(4)例外
4.まとめ

3.ガイドライン
ガイドラインでは、弁護士法72条の構成要件である①報酬を得る目的、②法律事件性及び③法律事務性のそれぞれについて具体例を挙げ、また①②③に該当する場合であっても弁護士法72条に該当しない場合についても説明しています。
(1)報酬を得る目的
○事業者が、利用料等一切の利益供与を受けることなく本件サービスを提供する場合
×当該事業者が提供する他の有償サービスを契約するよう誘導するとき
×第三者が提供する有償サービスを利用するよう誘導するとともに、本件サービスの利用者が当該第三者が提供する有償サービスを利用した際に当該第三者から当該事業者に対して金銭等が支払われるとき
×顧問料・サブスクリプション利用料・会費等の名目を問わず金銭等を支払って利用資格を得たものに対してのみ本件サービスを提供するとき
⇒実質的に対価が支払われる場合は報酬を得る目的があるということになります。

(2)法律事件性
×取引当事者間で紛争が生じた後に、当該紛争当事者間において、裁判外で紛争を解決して和解契約等を締結する場合
○親子会社やグループ会社間において従前から慣行として行われている物品や資金等のフローを明確にする場合、継続的取引の基本となる契約を締結している会社間において特段の紛争なく当該基本契約に基づき従前同様の物品を調達する契約を締結する場合
⇒紛争が前提となっているか否かが判断基準となっているようです。もっとも、「いわゆる企業法務において取り扱われる契約関係事務のうち、通常の業務に伴う契約の締結に向けての通常の話合いや法的問題点の検討については、多くの場合「事件性」がないとの当局の指摘に留意しつつ、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して、「事件性」が判断されるべき」とされており、諸般の事情を考慮して総合的に判断すべきということになります。

(3)法律事務性
ガイドラインは、3つのカテゴリーに分けて説明しています。
①契約書等の作成業務を支援するサービスについて
×同サービスを提供するために構築されたシステムにおいて、その利用者による非定型的な入力内容に応じ、個別の事案における契約に至る経緯やその背景事情、契約しようとする内容等を法的に処理して、当該処理に応じた具体的な契約書等が表示される場合
×同サービスを提供するために構築されたシステムにおいて、その利用者が、あらかじめ設定された項目について定型的な内容を入力し又は選択肢から希望する項目を選択する場合であっても、極めて詳細な項目、選択肢が設定されることにより、実質的には利用者による非定型的な入力がされ、当該入力内容に応じ、個別の事案における契約に至る経緯やその背景事情、契約しようとする内容等を法的に処理して、当該処理に応じた具体的な契約書等が表示されるものと認められる場合
○同システムにおいて、その利用者があらかじめ設定された項目について定型的な内容を入力し又は選択肢から希望する項目を選択することにより、その結果に従って、同サービスの提供者又は利用者があらかじめ同システムに登録した複数の契約書等のひな形から特定のひな形が選別されてそのまま表示されるか、複数のひな形の中から特定のひな形が選別された上で、利用者が入力した内容や選択した選択肢の内容が当該選別されたひな形に反映されることで、当該選別されたひな形の内容が変更されて表示されるにとどまる場合(上記の場合と認められるときを除く。)
⇒定型的な入力に従って個別事案を反映しない形で契約書が作成されるのであれば法律事務に該当しないということになりそうです。