AI等を用いた法的サービスと弁護士法72条の関係(その1)

2023.10.23

法的支援

近年、AI等を用いて契約書等の作成・審査・管理業務を一部自動化することにより支援するサービス(「本件サービス」)が普及しつつあります。他方で、弁護士法72条は非弁護士による法的サービスの提供を禁止しているため、両者の関係が問題になります。この点について、2023年8月、法務省から「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法72条との関係について」(「ガイドライン」)が公表されましたので、その概要を以下ご説明します。

1.弁護士法72条とは
2.弁護士法72条の趣旨(以上本号)
3.ガイドライン
(1)報酬を得る目的
(2)法律事件性
(3)法律事務性
①契約書等の作成業務を支援するサービスについて
②契約書等の審査業務を支援するサービスについて
③契約書等の管理業務を支援するサービスについて
(4)例外
4.まとめ

1.弁護士法72条とは
弁護士法72条は、以下の通り、非弁護士が①報酬を得る目的で②法律事件に関して③法律事務を取扱い又は周旋することを禁止しています。違反者は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられる可能性があります(弁護士法77条3号)。
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」

2.弁護士法72条の趣旨
弁護士法72条の趣旨についての最高裁判例(最高裁判所昭和46年7月14日大法廷判決・刑集第25巻5号690)では、以下のように述べられています。
「弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、ひろく法律事務を行なうことをその職務とするものであ つて、そのために弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実 適正な遂行のため必要な規律に服すべきものとされるなど、諸般の措置が講ぜられ ているのであるが、世上には、このような資格もなく、なんらの規律にも服しない者が、みずからの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とする ような例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益をそこね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害することになるので、同条は、かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられるのである。しかし、右のような弊害の防止のためには、私利をはかつてみだりに他人の法律事件に介入することを反復するような行為を取り締まれば足りるのであ つて、同条は、たまたま、縁故者が紛争解決に関与するとか、知人のため好意で弁護士を紹介するとか、社会生活上当然の相互扶助的協力をもつて目すべき行為まで も取締りの対象とするものではない。このような立法趣旨に徴すると、同条本文は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、業として、同条本文所定の法律事務を取り扱いまたはこれらの周旋をすることを禁止する規定であると解するのが相当である。換言すれば、具体的行為が法律 事務の取扱いであるか、その周旋であるかにかかわりなく、弁護士でない者が、報酬を得る目的でかかる行為を業とした場合に同条本文に違反することとなる」