カーボンゼロⅣ・・・・・・エネルギー価格の上昇は追い風ですが(その1)

2023.10.31

企業支援

最近の世界的な再生エネルギー活用の広がりはめざましいものがありますが、皮肉なことにそれをもたらしている要因の一つがロシアのウクライナ侵攻です。主にはロシアから欧州への天然ガス(メタンCH₄)供給への危機感、それによるエネルギー安全保障の確保への高まりです。再生可能エネルギーは、一般的には自国で獲得できるエネルギーですから当然のことでしょう。
ところで、ここからが今回の主題ですが、もう一つの要因と考えられるそれによりエネルギー価格が高騰したと捉えられていることについて考えてみます(エネルギー価格の高騰の主因は別にあり、根深いことで必然とも言えますがそれは後述します)。エネルギー価格が高騰し、それが相当期間継続していくというコンセンサスにより、再生可能エネルギーの採算性が向上しますので、それが拡大していくのは至極当然のことです。しかし、これはエネルギー価格が高騰した社会が継続していくことを前提としています。カーボンゼロを進めていく上では好ましいことですが、世界では安易には受け入れがたいというのが主流だと思います。日本でも、ガソリン、電気、ガス価格高騰対策が政治課題として大きく取り上げられているのはその証左です。ガソリン需要、電気・ガスの元となるエネルギー源(主としてメタンCH₄)の価格上昇による使用減少がもたらすCO₂発生量の抑制効果を絶とうとしているのですから、前回のシリーズでも触れた一方でカーボンゼロを実現することを掲げながら行っている矛盾した行動と言えます。これは、カーボンゼロが国際会議やメディアで大きく取り上げられていても、現状の環境を激変させてまでも達成すべき最優先の課題とは認識されていないということです。これは日本に限ったことではなく、前々回のシリーズで触れたEUタクソノミーでの天然ガス(メタンCH₄)をカーボンゼロに資するものとして評価すること、つい先日のイギリスがガソリン自動車の廃止期限も延期したこと、フランスでのエネルギー価格高騰を受けての全国的なデモも起きたこと等もこれを示しているかと思います。単純に考えれば、CO₂排出を産業革命前の水準に戻すためには、電気も内燃機関(エンジン等)も使わない生活に戻ればいいということですが、ごく一部の方を除けばそれを受け入れることは出来ないと思います。ただ、全く影響を受けないことはあり得ませんが少なくすることは出来ます。現状の生活を激変させたくなければ、個々人の正しい意識の変化が必須で、それがなければ国や企業のどんな取り組みも水泡に帰することとなりかねません。また一方では、カーボンゼロのためにどのくらいコストを負担できるのか、どのくらい生活パターンを変えることを受け入れられるのか考えてみる良いチャンスであるとも思います。そして、それが現状に近い生活を守ることに繋がります。レジ袋を受け取らないことがエコだと自己満足して、ポリエステル製エコバックを度々取り替えたりするような間違った意識改革とならないように気をつけねばなりませんが。ポリエステルはペットボトルと同じ材質です。話がずれましたが、ビジネスの世界でも、どんなにメディア等でもてはやされているテーマがあったとしても、それをすべてとするのはリスクが大きくなります。そのテーマに取り組む必要は当然あるとは思いますが、それに反していてもやらなければいけない根源的・本質的なことがある可能性もあります。
次回は、エエルギー価格についてもう少し掘り下げていきたいと思います。