不正競争防止法等の改正(知財一括法)(その4)

2023.09.4

法的支援

知的財産分野におけるデジタル化・国際化の進展を踏まえ、時代の要請に対応した知的財産制度を見直すため、(1)デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化、(2)コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続等の整備、(3)国際的な事業展開に関する制度整備を柱として、不正競争防止法、商標法、意匠法、特許法、実用新案法、工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(「工業所有権特例法」)が改正されました。(なお、以下の条文は参考であり網羅されている訳ではありません。)


1.デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化
(1)登録可能な商標の拡充
(2)意匠登録手続の要件緩和
(3)デジタル空間における模造行為の防止
(4)営業秘密・限定提供データの保護の強化(以上前号まで)
2.コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続等の整備
(1)送達制度の見直し
(2)書面手続のデジタル化等のための見直し
(3)手数料減免制度の見直し
3.国際的な事業展開に関する制度整備
(1)外国公務員贈賄に対する罰則の強化・拡充
(2)国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化

2.コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続等の整備
(1)送達制度の見直し
①国際郵便引受停止等に伴う公示送達の見直し(特許法191条1項、2項等)(2023年7月3日施行)
在外の出願人は、特許等に関する手続をする場合、原則、代理人を日本国内に置く必要があり、書類の送達は当該国内代理人に行いますが、手続が一旦完了し、代理人がいなくなった場合等には、書類を在外出願人に国際郵便で発送することになり、その発送の時に送達があったものとみなされます。コロナ禍等により、国際郵便の引受けが停止され国際郵便での発送が行えないことにより書類の送達ができなくなった場合に手続を進める規定がないため、当該出願人等の権利が確定しないという問題が生じました。このため、公示送達(官報や特許庁HPに拒絶査定謄本などの送達書類名を掲載し、一定期間経過後に 送達したとみなすもの)の要件に、国際郵便により発送が困難な状況が追加されました。あわせて、公示送達の方法に、特許庁事務所内のディスプレイでの閲覧も追加されました。
②オンライン送達制度の見直し(工業所有権特例法5条3項2号、5条の2)
工業所有権に関する手続等の特例に関する法律において、特許庁からの書類(拒絶査定等)の発送は、 特許庁の専用サーバに書類のデータが格納された後、出願人等がこれを覚知し、出願人等が使用するパソコ ンへの記録が完了した時点をもって、到達したものとみなすとされています。しかし、特許庁の専用サーバに書類のデータが格納されてから一定期間内に書類を受け取らない(使用するパソコンに記録しない)出願人等に対しては、紙に切り替えて書類を発送しています。そこで、リモートワークといった働き方の変容への対応や行政のデジタル化の動きを踏まえ、オンライン発送を希望する者に対しては、特許庁の専用サーバに書類のデータが格納され出願人等が受取可能な状態になってから10 日以内に受け取らない場合、送達したものとみなされることになりました。但し、代理を業として行う者については、オンライン発送の希望の有無にかかわらず、10日間経過後に、送達したものとみなされます。