不正競争防止法等の改正(知財一括法)(その2)

2023.08.7

法的支援

知的財産分野におけるデジタル化・国際化の進展を踏まえ、時代の要請に対応した知的財産制度を見直すため、(1)デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化、(2)コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続等の整備、(3)国際的な事業展開に関する制度整備を柱として、不正競争防止法、商標法、意匠法、特許法、実用新案法、工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(「工業所有権特例法」)が改正されました。(なお、以下の条文は参考であり網羅されている訳ではありません。)
1.デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化
(1)登録可能な商標の拡充(以上前号)
(2)意匠登録手続の要件緩和
(3)デジタル空間における模造行為の防止
(4)営業秘密・限定提供データの保護の強化
2.コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続等の整備
(1)送達制度の見直し
(2)書面手続のデジタル化等のための見直し
(3)手数料減免制度の見直し
3.国際的な事業展開に関する制度整備
(1)外国公務員贈賄に対する罰則の強化・拡充
(2)国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化

1.デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化
(2)意匠登録手続の要件緩和(意匠法4条3項)
意匠登録を受けるためには、「新規性」等の要件を満たすことが必要であり、出願前に自ら公開している場合も新規性を喪失したとして拒絶理由となります。意匠の新規性喪失の例外が認められるためには、出願と同時に例外の適用を受ける旨の書面(例外適用書面)を提出し、出願から30日以内に自ら公開したことを証明する証明書(例外適用証明書)を、自己が公開した全ての意匠について網羅的に 提出する必要がありました。これは、特にスタートアップ・中小企業にとっては大きな負担となっていました。このため、最先の公開日に公開した意匠の証明書を提出すれば、その日以後の公開についての証明は不要とする改正が行われました。

(3)デジタル空間における模造行為の防止(不正競争防止法2条3号)
不正競争防止法は、他人の商品形態を模倣した商品(酷似したモノマネ品)の提供行為 (形態模倣行為)を規制していますが、有体物の商品を想定しています。近年、デジタル技術の進展、デジタル空間の活用が進み、現行法では想定されていなかったデジタル上の精巧な衣服や小物等の商品の経済取引が活発化しています。このため、有体物に加え、デジタル空間上の商品の形態模倣行為(電気通信回線を通じて提供する行為)も 規制対象とし、デジタル空間上の商品の保護が強化されることになりました。