綜合商社での仕事(その2)

2023.07.3

企業支援

総合商社といえば、大きな仕事が出来る、国内に留まらずグローバルに働くことができる、高収入である、というイメージから、常に人気の業界であり、昨今の学生就職人気ランキングでも大手が上位をしめています。
今回は総合商社での仕事について、少しお話したいと思います。

1. 商社マンはプロデューサーでありオーガナイザーである(以上前号)
2. 業務の質は多種多様、でも専門性も要求される
3. 業務の量は、ただただ膨大である
4. 人間力が勝負である


2. 業務の質は多種多様、でも専門性も要求される
前項でピースを埋めるのが商社マンの仕事を書きましたが、最適なピース、各当事者のいずれもが利益を得るWIN-WINをもたらすピースでないと仕事は成立せず、ゆえに広く正確な市場情報や競合状況等きめ細かい情報収集力と、情報力・判断力をもってしての関係者間の利害の調整を図る力が必要となります。商社は都内一等地に構える大きなオフィスと、高給取りの役員や細分化された部署の上級管理職を前提としていますので、各商社マンに求められる利益水準は意外と高く、よって我が身を削った調整は評価されません。結局、過去の実績や経験値、現在の情報収集・分析・判断力と交渉力がものを言うので、行動のベースとなり力発揮の裏付けとなる専門性は不可欠になります。

企画段階では、市場環境・動向、商談の経緯を踏まえ、売上・利益・キャッシュフローといった財務諸表、与信判断、事業の社会性、考えうるリスクの想定と回避・最小化の方法など全てつめての起案となります。事業が会社設立を経てのものであれば人員計画や投資計画もこれに加わります。つめるためには、社内の財務部、法務部の専門的なオピニオンをとり、カンパニーや部門といった管掌役員をトップに仰ぐ事業ユニット内の資金・与信・法務担当スタッフにユニットの目指す方向性に合致しているかを確認も必要になります。ここまでつめて、直属の上司をその気にさせて捺印を得て、正式な起案書の完成です。上記のどれが欠けても話は進みません。みんな基本的に忙しいので、後回しにされず、テーブルに着いてもらうために、こちらが情報力・分析力・判断力をもち、よく準備して相談にきていると思わせることが不可欠になります。

起案書が提出され、所属ユニットのトップの決裁もおりた、さあビジネスの開始です!といきたいところですが… よくある事ですが社内決裁に条件がついてたりします。仕入れや顧客価格を見直せだの、キャッシュフローを精査し投資を最小限に抑えよだの、結構厳しめだったりします。生産者なり販売者なり共同経営者なり、ビジネスのパートナーに同じ方向を向いてもらわなければならず、これを乗り切らねばビジネスは開始できません。

さて漸くビジネスはスタートしましたが、当初の予定通りにいかない事が、多々かつ頻繁に発生します。マイナーな条件の修正で対処できるのか、収益の減少や必要資金の増加を甘受するのか、事態が深刻であれば、またぞろ社内決裁を仰ぐ事になります。
この段階になると、悪い事態の想定と対処という新たな専門性を、本人はその意思に関係なく取得することになります。

*社内関係者に教えを請い意見を仰ぐため、また社内外の当事者とお互いの理解を深め仲良くなるため、食事を一緒にすることは大変有効です。また情報を得たり大型案件の共同受注もあり同業他社との交流も意義があったりします。
商社マンあるあるの「飲み会が多い」になるわけです。

*教えを請い意見を仰ぐ相手は自分の先輩です。礼儀正しく臨む、当たり前の事です。どんなに疲れていても、これを忘れない様にします。 商社マンあるあるの「上下関係が厳しい」「体育会系が多い」はそんなところから来ているのかもしれません。