少子化問題の本質を考える(その4)

2023.03.20

子育て支援

現国会でも議論されている少子化問題についての一考察です。
1.少子化の現状
2.少子化がもたらす諸問題
3.少子化の背景
4.海外の状況
5.解決の方向性(以上前号まで)
6.結婚しない理由
7.婚姻数増加の方策
8.婚外子割合増加の方策
9.特効薬は何か
10.最後に

6.結婚しない理由
婚姻数の減少が少子化の直接的原因ですので、結婚しない理由について検討しました。
(1)結婚願望の変化?
18歳乃至34歳の未婚者の85%が「いずれ結婚するつもり」と回答しています(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(独身者調査)」2015年)。従って、最近の若者の結婚願望が特に低くなったとはいえないと思われます。
(2)結婚の機会の減少?
出会いのきっかけについては、1960年代は「お見合い」でしたが、2000年代は「お見合い」という回答はほとんどありません(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」)。お見合いは、互いの素性を周りの者も確認するという安心感もあり、特に恋愛に奥手な人や恋愛に関心のない人にとっては結婚につなげる有効な仕組みといえます。最近はやりのマッチングアプリは、結婚以外の目的で悪用される場合もあり、自由度や利便性が高いものの、必ずしも結婚につながる仕組みとまではいえません。自由恋愛の機会は増えたとしても、お見合いに代わるような結婚につながる仕組みがないことは、婚姻数減少の一因と考えます。
(3)女性の意識変化?
いくつになっても出産できる、キャリア形成してから出産すればいい、というような考えで結婚を先延ばしにした女性の中には、そのうちキャリアと出産・育児の両立に自信がなくなって結果的に結婚を断念する場合もあると推測されます。結婚の判断を先延ばししても構わないという意識が拡がれば、それだけ結婚を断念する機会も増えますので、女性の意識変化も婚姻数減少の一因になり得ると考えます。
(4)経済的理由?
上記3(5)で述べた通り、適齢期世代の非正規労働者の割合が1989年の19.1%(男性8.7%、女性36.0%)から2019年は38.3%(男性22.9%、女性56.0%)に増加し、正規労働者との賃金格差が是正されない状況では、長期雇用の保証がなく昇給もない非正規労働者が将来の経済的不安から結婚に踏み切れない場合もあると推測されます。
(5)成功モデルの欠如
もし若いときに妊娠出産してもキャリアを形成できるという蓋然性があれば、多くの女性にとって結婚を躊躇する理由はなくなるはずです。しかしながら実際には、妊娠出産とキャリア形成の関係が不明確であることが多く、妊娠・出産・育児とキャリア形成のいずれかを選択せざるを得ない場合も多いと推測されます。