少子化問題の本質を考える(その5)

2023.04.4

子育て支援

少子化問題の本質を考える(その5)

現国会でも議論されている少子化問題についての一考察です。
1.少子化の現状
2.少子化がもたらす諸問題
3.少子化の背景
4.海外の状況
5.解決の方向性
6.結婚しない理由(以上前号まで)
7.婚姻数増加の方策
8.婚外子割合増加の方策
9.特効薬は何か
10.最後に

7.婚姻数増加の方策
結婚した後の生活パターンとしては、大きく分けて、①夫婦の一方のみが働くパターンと②夫婦が共働きするパターンが考えられます。
(1)夫婦の一方のみが働くパターン
夫婦のうち働かない方が育児を担当する場合は、子育て上の大きな問題はないと考えられます。問題は、夫婦のうち働かない方が将来的には仕事に復帰してキャリア形成することを考えている場合です。子育てのためにキャリアを一旦中断した後復帰した場合であってもキャリア形成を追求できるような社内体制(復帰後の待遇・昇進についてのルール、復帰に向けた教育研修制度等)の整備とそれを支援する政策(整備に対する補助、整備の義務化等)が必要と考えます。キャリア追求を諦めたくないと考える女性にとって、子育てのためにキャリアを中断したとしてもその後キャリアを追求できる路が確保されているかどうかは、結婚するかどうかを判断するにあたって極めて深刻且つ重要な問題だからです。
なお、妻のみが働く場合、妻の妊娠・出産がキャリア形成に悪影響を及ぼさないような社内体制(産休の確保、育児休業の奨励、マタハラ防止策等)の整備も必要です。
(2) 夫婦が共働きするパターン
共働きの場合は、経済的な大きな問題は少ないと考えられますが、夫婦のキャリア形成が育児によって悪影響を受けないような環境整備が必要となります。具体的には、育児の負担を軽減するため、待機児童の解消、保育施設の利用時間の柔軟性、病児保育(具合が悪くなった子供を親が就業時間中に引き取りに行かなくてもすむ体制)、学童保育(就学児童の放課後の面倒を看る体制)等についての制度の充実のほか、勤務体制の柔軟化(育児休業の奨励、テレワークの普及、勤務時間の短縮・柔軟化等)が必要です。夫婦が就業時間中安心して育児を任せられる体制が確保されていれば、キャリアと育児の両立がより現実的となるからです。
(3)その他の方策
・妊娠・出産・生殖に関する情報提供により、晩産のリスク(妊娠率の減少、低体重化等)等についての啓発を行うことも重要と考えます。
・また、子育てを取り巻く社会・企業・男性の意識改革(職場環境、パートナー家族上司同僚の理解、仕事へのモチベーション等)も重要と考えます。子育てが重要であり支援しなければならないという意識を個人・企業・社会の全てのレベルで共有することが、子育て支援の環境整備の原動力となるはずだからです。
・制度改革によって出生率をV字回復した海外の成功例(スウェーデン、イギリス等)の施策を研究し、日本に適したものを導入することも検討されるべきです。経済的に困窮する家庭・女性を金銭的に援助することはもちろん大切ですが、それだけでは少子化問題の根本的な解決にならないと考えます。