少子化問題の本質を考える(その3)

2023.03.6

子育て支援

現国会でも議論されている少子化問題についての一考察です。
1.少子化の現状
2.少子化がもたらす諸問題
3.少子化の背景(以上前号まで)
4.海外の状況
5.解決の方向性
6.結婚しない理由
7.婚姻数増加の方策
8.婚外子割合増加の方策
9.特効薬は何か
10.最後に

4.海外の状況
(1)合計特殊出生率
フランス、スウェーデン及びイギリスの合計特殊出生率は、1960年代後半から1970年代前半にかけて低下傾向にありましたが、2000年以降2010年頃までに2.0前後まで上昇回復しました(但し、その後減少傾向し、フランスは1.86(2019年)、スウェーデンは1.71(2019年)、イギリスは1.68(2018年)となっています。)(Eurostat Statistics Database)。
(2)婚外子の割合
いわゆる婚外子の割合は、フランス61%、ドイツ33%、イタリア35%、スウェーデン54%、イギリス48%、アメリカ40%であるのに対し、日本は2.3%です(イギリスは2017年、その他は2019年)(U.S. department of Health and Human Services, National Vital Statistics Reports, Vol.70, No.2)。欧米では、結婚にとらわれずに出産・育児する人が、日本と比べて格段に多いという特徴があります。
(3)女子労働力率と出生率の相関関係
日本の女子労働力率は約70%で合計特殊出生率は1.34なのに対し、女子労働力率が高い国は概して合計特殊出生率も高いともいえます。例えば、女子労働力率が85%前後のスウェーデン(1.88)、ノルウェー(1.85)、オランダ(1.70)、80%代前半のフランス(1.96)、フィンランド(1.85)、70%代後半のアメリカ(2.2)、イギリス(1.80)、アイルランド(1.89)です。他方で、女子労働力率が85%超のポルトガル(1.40)、80%超のスペイン(1.40)、70%台後半のドイツ(1.37)というグループもあります((国立社会保障・人口問題研究所、ILO2008年)。例外はあるものの、女子労働力率が高い国は出生率も高い傾向にあります。

5.解決の方向性
(1)わかったこと
上記3(*)の通り、夫婦の間に生まれる子供の数は過去約50年間でほぼ2前後であり、少子化の直接の原因は婚姻数の減少であることがわかります。また、上記4の通り、合計特殊出生率の上昇に成功したフランス、スウェーデン及びイギリスを含め、欧米各国の婚外子の割合は40%以上と日本の2.3%と大きく異なり、女子労働力率が高い国は出生率も高い傾向にあります。
(2)方向性
少子化対策としては、婚姻数を増やすことと婚外子割合を増やすことが考えられます。しかしながら、婚外子割合については、日本の婚外子割合が欧米並みになるのは、社会的文化的違いに鑑みると、相当先の話と思われます(むしろ、婚外子でも育てられる社会制度の充実度の違いも大きいと考えます。)。従って、婚姻数を増やすためにその障害を軽減・除去することが、少子化対策の基本的方向と考えますが、婚外子割合を増やすための環境を整備することも見落としてはならないと考えます。