経営者が押さえておくべき最近の法律改正(2022年施行分)(その2)

2022.04.8

法的支援

経営者として押さえておくべきと思われる2022年に施行される予定の改正法をまとめました。本文中の条文番号は各法律の条文を示しています。
目次
1.電子帳簿保存法          7.女性活躍推進法
2.著作権法(以上前号)       8.民法
3.特許法              9.宅地建物取引業法
4.個人情報の保護に関する法(以上本号)10.公益通報者保護法
5.育児・介護休業法         11.厚生年金保険法・健康保険法 
6.労働施策総合推進法        12.プロバイダ責任制限法
                   13.特定商取引法 

3.特許法(2022年4月1日施行)
新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、デジタル化、リモート・非接触など経済活動のあり方が大きく変化したことを背景として、①新型コロナウイルスの感染拡大に対応したデジタル化等の手続の整備(審判口頭審理のオンライン化、印紙予納の廃止・料金支払方法の拡充、意匠・商標国際出願手続のデジタル化、災害等の理由による手続期間徒過後の割増料金免除)、②デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し(海外からの模倣品流入への規制強化(*)、訂正審判等における通常実施権者の承諾要件見直し(不要に)、特許権等の権利回復要件の緩和)、③訴訟手続や料金体系の見直し等の知的財産制度の基盤の強化(特許権侵害訴訟における第三者意見募集制度の導入、特許料等の料金体系見直し、弁理士制度の見直し)について改正されました。
(*)商標法・意匠法改正により、海外事業者による商標権・意匠権侵害品の輸入行為が商標権・意匠権侵害となることも明記されました。

4.個人情報の保護に関する法(2022年4月1日施行)
①個人の権利の強化
本人が事業者に対して個人データの利用停止・消去を請求できる場合の拡充(30条1項、5項)、事業者から第三者に対する個人データの提供の停止を請求できる場合の拡充(30条5項)、本人が事業者に対して保有個人データの開示を請求できる方法として電磁的記録(CD-ROM、電子メール、ウェブサイト等)の提供の追加(28条1項)、本人への開示・訂正・利用停止等の対象となる「保有個人データ」に6ヶ月以内に消去されることとなるものの追加(2条7項)、第三者提供記録(個人データの第三者提供の際に提供する側と提供される側で作成する記録(25条1項、26条3項))の本人による開示請求対象への追加(28条5項)について改正されました。
②事業者の責務の強化
個人データの漏洩等が発生し個人の権利利益を害するおそれが大きい場合の事業者の個人情報保護委員会に対する報告義務及び本人に対する通知義務(22条の2第1項)、事業者の違法又は不当な行為を助長し又は誘発するおそれがある方法による個人情報の利用の禁止(16条の2)、事業者が公表しなければならない事項として安全管理のために講じた措置の追加(27条1項4号)について改正されました。
③事業者による自主的取組の強化
民間の認定個人情報保護団体が特定の事業の種類その他業務の範囲に限定した個人情報を対象とする場合も認められるようになりました(47条2項)。
④データ利活用の見直し
事業者が個人データには該当しないが提供先において個人データとして取得されることが想定される情報(「個人関連情報」)を第三者に提供する場合の(原則として提供先が)本人の同意を得ていること等を確認する義務(26条の2)、「仮名加工情報」(他の情報と照合しない限り特定の個人を特定できないように個人情報を加工して得た個人に関する情報)(2条9項)及び仮名加工情報である個人データ・保有個人データについての目的外利用禁止(15条2項)、漏洩等の報告(22条の2)、保有個人データ事項の公表(27条)、保有個人データの開示・訂正・利用停止等(28条乃至34条)の規定の不適用(35条の2第9項)について改正されました。
⑤域外適用の拡大
外国にある第三者に個人データを提供するためには、①本人の同意を得ること、②第三者が基準に適合する体制を整備していること、又は③日本と同等の水準の個人情報保護制度を有する外国であることのいずれかが必要です。今回の改正により、①については、同意取得時に所在国の名称・当該外国における個人情報保護制度・移転先が講ずる個人情報保護措置に関する情報を本人に提供しなければならず、②については、移転先における適正取扱の実施状況等の定期的確認及び移転先における適正取扱に問題が生じた場合の対応等の必要な措置をしなければならず、本人の求めに応じて必要な措置に関する情報を提供しなければなりません(24条2項、3項)。また、国内にある者に対する物品役務の提供に関連して国内にある者を本人とする個人情報等を外国において取り扱う事業者も、罰則により担保された報告徴収・命令・立入検査等(40条)の対象となりました(75条)。