カーボンゼロ………それだけでいいの?(その1)

2021.09.10

企業支援

カーボンゼロ、カーボンニュートラル、カーボンオフセットと言葉は違いますが、最近温室効果ガスである二酸化炭素(CO₂)の排出量と吸収量を相殺してゼロにしようという取り組みをよく耳にするようになりました。日本では、2050年での達成を目指すことを菅首相が発表し、その後多くの企業でその取り組みを導入する動きが広がりを見せています。あたかもその取り組みの導入を発表しないと「地球環境に配慮しない企業」というレッテルが張られるのではと危惧せざるをえない風潮と言っても、あながち過ちではないでしょう。
これは、地球温暖化を防ぐために、大気中の温室効果ガスの含有量を低下させる必要があり、とりわけ温室効果ガスの中で大きな割合を占めるCO₂の大気中の含有量の増加が産業革命以降顕著にみられることから、すべての客体(国や法人など)が各々CO₂の排出量と吸収量を管理することにより、排出量と吸収量を相殺してゼロに出来れば、トータルとして大気中のCO₂増加を防ぐことが出来るという発想です。これは、ビジネスの世界でもよく使われる手法で、目標(地球温暖化防止)を実現するために手段(温室効果ガス削減)を設定し、その手段の実現を目標として更にそれを実現するための下位の手段(カーボンゼロ)を設定していくことを繰り返し、おおもとの目標を実現しようというものです。
しかし、かかる発想には陥りがちな欠点があり、末端に近い手段であってもその手段が広がっていくとその手段自身が目標として肥大化し、本来の目標の存在が忘れられていくというリスクを常に孕んでいます。次回は、この問題を題材に少し考えてみたいと思います。