相続法改正(その4)

2021.08.30

法的支援

今回は、以下のポイントについて解説します。

3 遺言制度に関する見直し(原則2019年7月1日施行)
⑴ 自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日)
全文の自書を要求している現行の自筆証書遺言の方式が緩和され,自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいことになりました。ただし,財産目録の各頁に署名押印することを要します。
自筆証書遺言を作成するためには財産目録も含めて全文を自書する必要がありましたが、添付する財産目録については各ページに署名押印することにより自書しなくてもよいことになりました。これにより、銀行通帳の写し、不動産の登記事項証明書、パソコンで作成したリスト等も財産目録として添付できるようになりました。
⑵ 遺言執行者の権限の明確化等
・遺言執行者の一般的な権限として,遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずることが明文化されました。
・特定遺贈又は特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言のうち,遺産分割方法の指定として特定の財産の承継が定められたもの)がされた場合における遺言執行者の権限等が明確化されました。

4 遺留分制度に関する見直し(2019年7月1日施行)
⑴ 遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行法の規律が見直され,遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることになりました。
⑵ 遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が,金銭を直ちには準備できない場合には,受遺者等は,裁判所に対し,金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができます。
遺留分減殺請求の対象財産が受遺者・受贈者と減殺請求者との共有状態となることによる不都合(遺言者の意思に反する、事業承継の妨げとなる、共有持分権の処分が複雑になるおそれがある)を解消するため、遺留分減殺請求権から生じる権利は物権的効果(共有化)のない金銭支払請求権になりました。