フリーランスの保護(その3)

2021.08.13

法的支援

今回は、独占禁止法・下請法上問題となる事例について解説します。

2独占禁止法・下請法上問題となる事例
ガイドラインは、独占禁止法・下請法上問題となる事例として、以下のものを列挙しています。
①報酬の支払遅延
・事業者の一方的都合(社内手続・設計仕様の変更等)による支払遅延
・事業者の恣意的な検収・仕様等の遅延による支払遅延
・事業者の一方的都合による一括払いから分割払いへの変更
②報酬の減額
・事業者の一方的都合(業績悪化・予算不足・顧客からのキャンセル等)による報酬減額
・事業者の一方的都合により作業量が増大したにもかかわらず当初の報酬額のみの支払
・実際の作業量が当初見込みより少なかったことを理由とする報酬減額
・事業者が一方的に重複作業を自ら実施したことを理由とする報酬減額
(*)フリーランスが労働基準法上の労働者に該当する場合は、費用や損害賠償の天引きは禁止され、最低賃金法上の最低賃金や割増賃金を請求できる可能性もあります。
③著しく低い報酬の一方的な決定
・短い納期を設定したために必要な費用が大幅に増加したにもかかわらず通常の納期の場合と同じ報酬を一方的に決定
・事業者の予算単価や不合理な算定方法に基づいて一方的に通常より著しく低い報酬を決定
・フリーランスが協議を求めたにもかかわらず見積書の金額に基づいて一方的に著しく低い報酬を決定
・合理的理由なく他のフリーランスよりも一方的に著しく低い報酬を決定
・事業者の要請により費用が増加するにも関わらず一方的に著しく低い報酬を決定
④やり直しの要請
・事業者の一方的都合による仕様変更をフリーランスに伝えなかったことによるやり直しの要請
・フリーランスが求めたにもかかわらず正当な理由なく仕様を明確にしなかったことによるやり直しの要請
・検査基準を恣意的に厳しくしたことによるやり直しの要請
⑤一方的な発注の取り消し
・事業者の指示に対応するためのフリーランスによる機材・ソフトウェアの調達や資格取得にもかかわらず、一方的都合による発注を取り消し
・契約時に定めていない役務等の無償提供をフリーランスが拒んだことを理由とする一方的な発注の取り消し
⑥役務の成果物に係る権利の一方的な取扱い
・役務の成果物の二次利用についての著作権者であるフリーランスに対する対価の不払い、配分割合の一方的決定
・フリーランスに対する著作権等の権利の譲渡の強要
(*)職務著作(著作権法15条)に該当する場合は使用者が著作者になります。

以下については、次回に解説します。
⑦役務の成果物の受領拒否
⑧役務の成果物の返還
⑨不要な商品・役務の購入・利用の強制
⑩不当な経済上の利益の提供要請
⑪合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務の一方的な設定
⑫その他取引条件の一方的な設定・変更・実施