法律改正2024年(その8)

2024.05.13

法的支援

2024年に施行される事業者が知っておくべき法律改正情報について概説します。
1.労働条件の明示          9.電子帳簿保存法法
2.時間外労働の上限規制       10.不当景品類及び不当表示防止法
3.健康保険・厚生年金保険      11.意匠法(以上前号まで)
4.裁量労働制            12.商標法
5.障害者雇用率の引き上げ      13.不正競争防止法
6.障害者差別禁止法         14.不動産登記法
7.フリーランス保護新法       15. 民事訴訟法
8.労働安全衛生法          16.民法                   

12.商標法(2024年4月1日施行)
①コンセント制度の導入(商標法4条4項)
先行する他人の登録商標と同一又は類似する商標は、当該登録商標に係る又は類似する商 品・役務についての登録を受けることができませんが、諸外国の多くと同様に、先行する登録商標の権利者が同意し且つ消費者(需要者)に混同が生じるおそれがない場合には併存登録が認められるようになりました(コンセント制度)。混同が生じるおそれがないかの判断に当たっては、商品・役務の用途など、実際に商標が使用される場面で 棲み分けがなされているか等に着目することとされています。商標が併存登記された場合は、混同防止表示請求(混同のおそれがある場合)や不正使用取消審判請求(混同が生じている場合)が可能となります。
②不正競争防止法の適用除外規定の新設(不正競争防止法19条3号)
コンセント制度の安定した活用のため、同意した両者が不正の目的でなく商標を使用している場合には、相手側の商標の使用行為を不正競争行為として扱わない(適用除外)こととされました(不正競争防止法19条)。これにより、同意した商標権者が併存登記した商標権者に対して周知表示混同惹起行為・著名表示冒用行為を理由とする差止・損害賠償請求をすることはできなくなります。
③他人の氏名を含む商標に係る登録拒絶要件の見直し(商標法4条1項8号)
「他人の氏名」を含む商標は、当該他人の承諾がない限り、商標登録を受けることができず、実務上は、同姓同名の他人全員 の承諾が得られなければ商標登録を受けることができません。このため、①「他人の氏名」に一定の知名度の要件と②出願人側の事情を考慮する要件を課し、氏名に一定の知名度を有する他人が存在せず且つ出願人側の事情を考慮する要件を満たしている場合(例えば、商標構成中の氏名が自己氏名等であり、商標登録を受けることについて不正の目的を有していない場合)には、他人の承諾なく商標登録が可能となりました。
商標制度小委員会は以下の整理をしています。
(a)商標に含まれる他人の氏名が一定の知名度を有する場合は、人格的利益の侵害の蓋然性が高いため、出願人側の事情を問わず、出願が拒絶される
(b)商標に含まれる他人の氏名が一定の知名度を有しない場合は、出願人側の事情を考慮することで、他人の人格的利益が侵害されるような濫用的な出願は拒絶される