法律改正2024年(その7)

2024.04.30

法的支援

2024年に施行される事業者が知っておくべき法律改正情報について概説します。
1.労働条件の明示          9.電子帳簿保存法法
2.時間外労働の上限規制       10.不当景品類及び不当表示防止法
3.健康保険・厚生年金保険      11.意匠法
4.裁量労働制            12.商標法
5.障害者雇用率の引き上げ      13.不正競争防止法
6.障害者差別禁止法         14.不動産登記法
7.フリーランス保護新法       15. 民事訴訟法
8.労働安全衛生法(以上前号まで)  16.民法                   

9.電子帳簿保存法(2024年1月1日施行)
2022年1月1日に施行された改正電子帳簿保存法により、電子取引に係るデータは電子保存が義務付けられ、紙に印刷して保存することは不可とされています。ただし、2022年1月1日から2023年12月31日まで2年間の宥恕措置(経過措置)が設けられ、一定の要件を満たす場合には紙媒体による印刷保存も認められていました。2024年1月1日以降は上記の宥恕措置が撤廃されるため、電子取引に係るデータは電子保存が一律で義務付けられます。

10.不当景品類及び不当表示防止法(2024年11月までに施行)
①事業者の自主的な取り組みの促進
優良誤認表示等の疑いのある表示等をした事業者が是正措置計画を申請し、内閣総理大臣から認定を受けたときは、当該行為について、措置命令及び課徴金納付命令の適用を受けないこととすることで迅速に問題を改善する、確約手続きが導入されました(26条ないし33条)。また、課徴金制度における返金措置が弾力化され、特定の消費者へ一定の返金を行った場合に課徴金額から当該金額が減額される返金措置に関して、返金方法として金銭による返金に加えて第三者型前払式支払手段(いわゆる電子マネー等)が許容されることとなりました(10条)。
②違反行為に対する抑止力の強化
課徴金制度が見直され、課徴金の計算の基礎となるべき事実を把握することができない期間における売上額を推計することができる規定が整備されるとともに、違反行為から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者に対し、課徴金の額を加算(1.5倍)する規定が新設されました(8条4項ないし6項)。また、罰則規定が拡充され、優良誤認表示・有利誤認表示に対し、直罰(100万円以下の罰金)が新設されました(48条)。
③円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等
措置命令等における送達制度の整備・拡充、および外国執行当局に対する情報提供制度の創設がなされ、国際化の進展への対応が進められました(41条ないし44条)。また、適格消費者団体が、一定の場合に、事業者に対し、当該事業者による表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるとともに、事業者は当該要請に応ずる努力義務を負う旨の規定が新設されました(35条)。

11.意匠法(2024年1月1日施行)
意匠登録を受けるためには、その意匠に新規性が認められる必要があります。発表(公開)によって新規性を喪失した意匠を登録したい場合、例外適用として全ての公開意匠を網羅した証明書を提出することが必要でしたが、この要件が緩和され、最先の公開意匠についての証明書で足りることとなります。
以下の場合は新規性が喪失しなかったものと看做されます(意匠法4条2項・3項)。
(a)新規性を喪失した日から1年以内に意匠登録出願がされている
(b)意匠登録出願と同時に意匠法4条2項の適用を受けようとする旨を記載した書面が提出されている
(c)出願日から30日以内に新規性を喪失した意匠が意匠法4条2項の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(例外適用証明書)が提出されている
改正前は全ての公開意匠を網羅した例外適用証明書を作成することが必要でしたが、今回の改正により、全ての公開意匠ではなく最先(最初)の公開意匠についての証明書を提出することで、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができるようになります。