IPOをめざそう(その3)~IPOの関係者 [その1]

2023.09.11

企業支援

今回は、IPOの準備に必要な関係者の役割と選び方について説明します。IPOには様々な関係者が上場申請会社をサポートしていくことになりますが、必ず必要となる関係者には、証券会社、監査法人、株式事務代行会社があります。そのほか、証券印刷会社、ベンチャーキャピタル、IPOコンサルティング会社、弁護士・税理士・社会保険労務士などの専門家が、必要に応じ登場します。必須となる証券会社、監査法人、株式事務代行会社と、ほとんどの会社が利用している証券印刷会社について説明していきます。


1.証券会社
(1) 主幹事証券会社、幹事証券会社、引受証券会社
(2) 主幹事証券会社の役割(以上本号)
(3) コンフリクト
(4) 主幹事証券会社の選び方
2.監査法人
3.株式事務代行会社
4.証券印刷会社

1. 証券会社
(1)主幹事証券会社、幹事証券会社、引受証券会社
IPOに際し証券会社は最重要関係者ですが、中でも主幹事証券会社がIPO準備の中心的な役割を担います。主幹事証券会社は、上場申請会社と併走し必要な助言やサポートを行い、上場準備開始から上場に至る最低でも3年程度の期間に渡るプロジェクトを組立て、ハンドリングしていきます。取引所への上場申請の際には、上場基準に適合する見込みがあると判断した旨と重点的に確認した事項を記載した「上場適格性調査に関する報告書」を取引所に提出します。また、上場時の株式の公募・売出しにあたり、公募・売出しの価格(公開価格)を決定し、株式の最も大きな割合を引受け投資家に販売します。証券会社はそのステイタスによって、主幹事証券会社、幹事証券会社、引受証券会社に分かれていますが、株式の引受けを行うのが引受証券会社、その中で会社と通常コンタクトを持ち、時によっては主幹事証券会社の補助的な役割を担うのが幹事証券会社です。主幹事証券会社、幹事証券会社は、会社四季報にも記載されています。

(2)主幹事証券会社の役割
以下では、時系列に沿って証券会社の体制も含め詳しく見ていきます。IPOには、証券会社の営業部門、公開引受部門、引受審査部門、アナリストが関与します。

最初に、営業部門が上場申請会社にコンタクトします。この部門の名称は証券会社によって様々ですが、証券会社の窓口となる部門で、上場申請会社とのリレーションシップを担います。IPOの可能性をある会社を発掘し、場合によってはIPOを促し、主幹事証券会社の指名を獲得することが第一の仕事になります。上場申請会社は、主幹事を決定した時、証券会社に対し主幹事証券会社に指名することを確約する書類(主幹事宣言書、マンデートとも言われる)を差し入れます。これによって、IPOの準備がスタートする訳ではなく、後々変更することも可能です。証券会社の中での営業部門の立ち位置は、上場申請会社寄りにあります。上場申請会社の状況や要望を公開引受部門や引受審査部門に伝えたり、逆に必要な場合は上場申請会社を説得したりする役割を果たします。担当者は、社長と深い信頼関係を作り、IPO以外のM&Aやビジネスマッチング、時には社長個人の相続対策や資産運用などの相談も受け、ニーズに対応できる機能部署につなぎます。担当者は、専門的な知識があればそれに越したことはありませんが、それよりも幅広い知識とリレーション構築の能力が必要となります。

次に、具体的な上場準備開始に際し関与を始めるのが、公開引受部門です。上場準備の助言やサポートを主に行う部門で、具体的には、事業計画の作成、予算実績管理の体制整備、上場準備のスケジュールの作成、社内規則整備や内部管理体制整備、ガバナンス体制整備、取引所の審査や取引所との折衝、資本政策の作成などについて、助言やサポートを行います。上場準備の開始にあたって、証券会社との間でアドバイザリー契約を締結します。費用としては、一般的に月額50万円程度のランニングフィーと500万程度の成功報酬が発生します。