障害者差別解消法改正(その1)

2023.06.27

法的支援

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(「障害者差別解消法」)が改正され、改正法は令和6年4月1日から施行されます。以下では、事業者が知っておくべきポイントを概説します。
1.改正内容
2.合理的配慮義務の要件(以上本号)
3.合理的配慮義務の内容

1. 改正内容
国連の「障害者に権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度整備の一環として、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月に障害者差別解消法が制定されましたが、今回の改正により、事業者の合理的配慮に関する法的義務が定められました(改正前は努力義務)。
「障害者差別解消法8条2項
事業者(*1)は、その事業を行うに当たり、障害者(*2)から現に社会的障壁(*3)の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。」
(*1)事業者とは、商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)をいう(障害者差別解消法2条7号)。
(*2)障害者とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病等に起因する障害を含む。)(「障害」)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう(障害者差別解消法2条1号)。
(*3)社会的障害とは、障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう(障害者差別解消法2条2号)。

2. 合理的配慮義務の要件
合理的配慮義務が発生するための要件は以下の通りです。
(1) 障害者からの現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(令和5年3月14日閣議決定、令和6年4月1日施行)(「ガイドライン」)では、言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)によることも想定されています。また、障害の特性等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が、本人を補佐して行う意思の表明も含むとされています。
(2) 社会的障壁除去の実施に伴う負担が過重でないこと
ガイドラインでは、事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)、実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的に判断するとされています。また、過重な負担になると判断した場合には、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましいとされています。