2020年公益通報者保護法改正(完)

2021.11.19

法的支援

公益通報者保護法は、公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等により、公益通報者の保護を図るとともに、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする法律です(同法1条)。
今回は以下のポイントについて説明します。
2 公益通報者保護の拡充
② 労働者による3号通報の要件緩和
③ 退職者・役員の不利益取扱いからの保護
④ 通報を理由とする損害賠償義務の免責
3 事業者・行政機関の措置の拡充
① 事業者の取るべき措置
② 公益通報対応業務従事者の義務
③ 行政機関の義務

2 公益通報者保護の拡充
② 労働者による3号通報の要件緩和(法3条3号ハ、へ)
3号通報(通報対象事実を通報することがその発生又は被害拡大を防止するために必要と認められる者(メディア等の第三者)に対する公益通報)を理由とする労働者の解雇が無効となる場合として、(i)事業者(又は事業者が予め定めた者)に対する公益通報をすると、事業者が、当該公益通報者について知り得た事項を、同人を特定させると知りながら、正当理由なく漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合及び(ii)個人の財産に対する損害(回復不能の損害又は著しく多数の個人にける多額の損害であって、通報対象事実を直接の原因とするもの)が発生し又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合が追加されました。公益通報者情報の漏洩と重大な財産被害が追加されたということです。
③ 退職者・役員の不利益取扱いからの保護(法5条1項及び3項、6条、8条4項)
公益通報の主体に加えられた退職者・役員に対する公益通報を理由とする不利益取扱い(退職者に対する退職金の不支給、役員に対する報酬減額等)の禁止が追加されました。
また、役員は、事業者に対し、法6条に定める要件を満たす公益通報を理由とする役員の解任によって生じた損害の賠償を請求できるものとされました(他の法令に基づく損害賠償請求は妨げられません)。 
④ 通報を理由とする損害賠償義務の免責(法7条)
事業者は、公益通報者に対し、公益通報(法3条・6条に定めるもの)による事業者の損害の賠償を請求できないものとされました。

3 事業者・行政機関の措置の拡充
① 事業者の取るべき措置(法11条、15条、16条、22条)
事業者は、公益通報(法3条1号及び6条1号)を受け、通報対象事実の調査を行い、その是正に必要な措置を取る業務に従事する者(公益通報対応業務従事者)を定め、公益通報(法3条1号及び6条1号)に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の措置をとらなければならないものとされました。但し、常時使用する労働者数が300人以下の事業者については努力義務とされています。
上記義務の履行は、内閣総理大臣(消費者庁長官に委任)による報告徴求、助言、指導、勧告の対象となります(法15条)。勧告に違反した場合(常時使用労働者300人超の場合)は公表の対象となり(法16条)、報告に応ぜず又は虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料の対象となります(法22条)。
② 公益通報対応業務従事者の義務(法12条)
公益通報対応業務従事者(及び公益通報対応業務従事者であった者)は、正当理由がなければ、当該業務に関して知り得た事項で公益通報者を特定させるものを漏えいすることが禁止されます。違反は30万円以下の罰金の対象となります(法21条)。
③ 行政機関の義務(法13条2項)
通報対象事実について処分勧告権限を有する行政機関は、公益通報(法3条2号及び6条2号)に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の措置をとらなければならないものとされました。