2020年公益通報者保護法改正(その1)

2021.10.15

法的支援

公益通報者保護法は、公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等により、公益通報者の保護を図るとともに、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする法律です(同法1条)。企業の法令違反行為を労働者が内部告発した結果、その労働者が降格や減給、解雇など不利益を被ることを防ぎ、また企業のコンプライアンス(法令遵守)経営を進めるために、2006年4月に施行されました。2020年の改正公益通報者保護法は、公益通報者の保護をより確実にし、公益通報制度の実効性を高め、不祥事の早期是正と被害防止を実現することを目指すものであり、公布日(2020年6月12日)から2年以内に施行される予定です。

今回は以下のポイントについて説明します。
1 公益通報の範囲の拡大
① 公益通報の主体の拡大
② 通報対象事実の拡大
③通報先の拡大 
2 公益通報者保護の拡充
① 労働者による2号通報の要件緩和

1 公益通報の範囲の拡大
① 公益通報の主体の拡大(法2条1項1号、同条2項4号)
労働者・派遣労働者等のほか、(i)通報日の前1年以内に労働者・派遣労働者等であった者及び(ii)役員が追加されました。
② 通報対象事実の拡大(法2条3項1号)
刑事罰対象行為のほか、過料対象行為と同法違反行為が追加されました(同法別表参照)。
③通報先の拡大(法2条1項柱書)
(i)事業者(又は事業者が予め定めた者)、(ii)監督権限ある行政機関、(iii)通報対象事実を通報することがその発生又は被害拡大を防止するために必要と認められる者(メディア等の第三者)のほか、「監督権限のある行政機関があらかじめ定めた者」(外部委託先)が追加されました。

2 公益通報者保護の拡充
① 労働者による2号通報の要件緩和(法3条2号)
2号通報(監督権限ある行政機関に対する公益通報)を理由とする労働者の解雇が無効となる場合として、公益通報対象事実が生じ又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由(真実相当性)がある場合のほか、通報対象事実が生じ又は生じようとしていると思料し且つ以下の事項を記載した書面(電子メール含む)を提出する場合が追加されました。
(i)公益通報者の氏名又は名称及び住所又は居所
(ii)当該通報対象事実の内容
(iii)上記思料の理由
(iv)当該通報対象事実について法令に基づく措置等適当な措置がとられるべきと思料する理由