最近の法律改正(2023年を中心に)(その5)

2023.05.29

法的支援

昨年Newsletterで既にご紹介したものも含め、2023年を中心に施行される法律改正をまとめました。
1.労働基準法
2.育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
3.民法
4.不動産登記法
5.相続土地国庫帰属法
6.個人情報の保護に関する法律
7.消費者契約法(以上前号まで)
8.消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律
9.消費税法

8.消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律({消費者裁判手続特例法})(2023年6月1日施行)
消費者裁判手続特例法(2016年10月1日施行)は、消費者契約に関する財産的被害を集団的に回復するための裁判手続の特例を定めるものです。国から認定された特定適格消費者団体が原告となり、事業者の共通義務(相当多数の消費者に対する金銭支払義務)を確認する第一段階(共通義務確認訴訟)と消費者の債権を個別に確定する第二段階(簡易確定手続)の手続から構成されています。日本版クラスアクションとして期待されていますが、利用例が少ないのが現状です。
①対象範囲の拡大
共通義務確認の対象となる損害として、基礎的事実関係が共通で且つ(i)財産的請求と共通する事実上の原因に基づいて併せて請求される場合又は(ii)事業者の故意により生じた場合の慰謝料が追加されました(3条2項)。
対象となる被告として、事業監督者及び被用者(故意重過失ある者に限る。)が追加されました(3条1項、3項)。
②和解の早期柔軟化
共通義務確認訴訟における和解として、事業者の責任(共通義務)を認める和解だけでなく、解決金を支払う和解等の様々な和解が可能になりました(11条)。
③消費者への情報提供方法の拡充
共通義務確認訴訟が係属する裁判所は、適格消費者団体の申立により、その疎明に基づいて、事業者等に対し消費者情報を開示することを命ずる(保全開示命令)ことができるようになりました(9条)。
簡易確定手続申立団体の対象消費者に対する個別通知の記載事項が簡略化されました(27条2項)。
事業者等は、簡易確定手続申立団体の求めにより、対象消費者に対し個別通知をしなければなくなりました(28条)。
内閣総理大臣が公表する情報として、簡易確定手続開始決定の概要、公告(26条1項、2項前段、3項)の概要、簡易確定手続申立団体の対象消費者に対する個別通知(27条1項)の概要が追加されました(95条1項)。
④特定適格消費者団体の負担軽減
特定適格消費者団体(71条の認定を受けた適格消費者団体)を支援する法人(消費者団体等支援法人)を認定する制度が導入されました(98条ないし113条)。消費者団体支援法人は、特定適格消費者団体の通知や行政の公表等を受託することにより、特定適格消費者団体の負担を軽減します。
⑤その他
簡易確定手続の申立が柔軟化されました(和解に応じた申立、申立期間の伸張等)(15条、16条)。
簡易確定手続の事件記録の閲覧請求は、簡易確定手続の当事者及び利害関係を疎明した第三者に限られることが明確になりました(54条)。
特定認定の有効期間が3年から6年に延長されました(75条)。
特定適格消費者団体と適格消費者団体その他の関係者との連携協力努力義務が定められました(81条4項)。