~会社をまとめていくためのリーダーシップとチームづくり~(その1)

2023.04.10

企業支援

1)仕事はチェックではなくサポートして進める(以上本号)
2)人間関係を重視する
3)根気をもつ、我慢する

社長の仕事を一言でいうとしたら、会社の目標を立てて達成に向かって社員をリードしていくことでしょう。
ビジネスの世界ではこのやり方が一番正しいというのはありませんが、どうすれば、社員が良い雰囲気のなかで仕事を進め、素晴らしい成果をもたらしてくれるのでしょう?社長になれば誰でも直面する課題のひとつですが、特に創業して間もない人には、初めて経験する社長の役割や立ち位置について、少なからず悩まれるものだと思います。
私自身も随分と悩んだこの課題に対して、拙い自分の経験と反省も込めて、社長のリーダーシップとチームづくりに必要と考えることを書いてみたいと思います。

会社が立上げ当初の場合は、社員数が少ないため、課題に対して自らアイデアを出し、自分が先頭に立って行動して切り拓いていく、という率先垂範型リーダーシップが一般的でしょう。会社の実情に一番精通しているのは自分、任せようにも頼りにできる人間がまわりにいない、という思いがそうした行動をとらせることになります。
また、IT技術が社会経済の基盤となる中、競争に勝つにはスピード優先や効率第一主義が必要不可欠という風潮があります。このため、とにかく素早く動かなければという強迫観念が経営者には常につきまといます。こうした理由から、新米社長はいきおいワンマンプレーのトップダウン経営を取りがちですが、このやり方にはいくつか落とし穴があります。
気をつけるべき点とその対処法についてまとめてみました。

1)仕事はチェックではなくサポートして進める
仕事を回すやり方は、計画をつくってまず行動を起こし、振り返りをして修正点を見つけ、改善対策を実行に移す、というのがPDCAの基本パターンですが、実際には、社長の目は進捗管理と結果ばかりにいきがちです。例えば良くない結果がでたとしましょう。社長は、自ら会議を主催して課題をリストアップ、自分で考えた対策案を示し指示することで、解決しようと躍起になります。私自身も当初はそういう行動をとっていました。時間とマンパワーに制約がある以上、こうしたやり方ではすぐに限界が露呈しますし、自ら手を下し細部にまでマイクロマネジメントをしてしまうと、組織が上手く回らなくなります。社員のヤル気が生まれてきませんし、彼らの能力を上手く引き出すことができず、下手をしたら会社から離反していきます。

もし組織を上手く回したいと考えるならば、指示よりもヒアリングに重点を置くべきです。ヒアリングの仕方も、何が問題かに焦点を当てるのではなく、社員が良い成果を出すためにどんなサポートができるか教えてほしい、と聞くべきです。そうすると、現場の状況に根ざした生きた改善案が出やすいですし、何より社員に目的意識が生まれ自分たちの手で良くしようという自主的な活力が出てきます。
この相手の言うことをよく聞く、傾聴する姿勢で思い出すのは、海外駐在時分に、現地人副社長が個室のドアをいつも開け放ちノブには「My door is always open for you.」という看板をぶら下げていたことです。そこで相談にいくと、彼は目じりにしわを寄せながら「あなたが望ましいと思うアイデアは何か、その実現のために私がどう動けば良いのか教えてほしい」と、いつも決まって、自分の意見をほとんど言わずに、臆面もなく相談者の考えや自分がどう動くべきかを聞く人でした。当時の私は、彼は魅力的な性格の持ち主だが自分の頭で考えようとしない人物だなと少し軽く見くびってみていました。しかし、今になって思えば、これが彼の組織を活性化するマネジメントスタイルだったんだ、と改めて気づかされます。

私もマネして日本ではいつもドアを開放していましたが、個人的魅力に欠けるのか、遠慮があるのか、飛び込んで相談にくる人は少なく余り成果はありませんでした。代わりに、隔週一回のペースで全社員と個人面談の時間を設けて、仕事のこと会社生活のことなど何でも聞くようにしていました。昼食の開始時間や細かな勤務管理ルールなど、普段の会議では気づかないことを社員から随分と教えてもらい、すぐに対応できることは素早く手を打つことで、出来るだけ距離を近づけるよう努力をしていました。