最近の法律改正(2023年を中心に)(その2)

2023.03.27

法的支援

昨年Newsletterで既にご紹介したものも含め、2023年を中心に施行される法律改正をまとめました。
1.労働基準法
2.育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以上前号)
3.民法
4.不動産登記法
5.相続土地国庫帰属法
6.個人情報の保護に関する法律
7.消費者契約法
8.消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律
9.消費税法

3.民法(2023年4月1日施行)
①相隣関係(隣地使用権、竹木の枝の切除等、設備設置権及び設備使用権)、②共有等(共有物を使用する共有者と他の共有者との関係、共有物の変更、共有物の管理、裁判による共有物の分割、相続財産に属する共有物の分割の特則、所在等不明共有者の持分の譲渡)、③所有者不明土地建物・管理不全土地建物の管理命令(所有者不明土地管理命令、所有者不明建物管理命令、管理不全土地管理命令、管理不全建物管理命令)、④相続等(相続財産等の管理、相続を放棄した者による管理、不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消、相続財産の清算、遺産分割に関する見直し)について改正されました。詳細はNewsletter (2022年5月20日、6月17日、7月8日、8月12日、8月26日、9月2日)をご覧ください。

4.不動産登記法
①形骸化した登記の抹消手続の簡略化(2023年4月1日施行)
以下の形骸化した登記の抹消を、登記権利者の単独申請により可能とする規定が設けられました。
・買戻しの特約がされた売買契約の日から10年を経過したときは、登記権利者(売買契約の買主)は単独で当該登記の抹消を申請できます(不動産登記法69条の2)。
・地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記について登記された存続期間や買戻しの期間が既に満了している場合、所定の調査方法によっても権利者(登記義務者)の所在が判明しないときは、登記権利者は単独で当該登記の抹消を申請できます(不動産登記法70条2項)。
・解散した法人の清算人の所在が判明しないために先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消の申請をすることができない場合、法人の解散後30年が経過し、かつ、被担保債権の弁済期から30年を経過したときは、供託等をしなくとも、登記権利者(不動産所有者)は単独でその登記の抹消を申請できます(不動産登記法70条の2)。
②登記簿の附属書類の閲覧制度の見直し(2023年4月1日施行)
旧不動産登記法下では、土地所在図等の図面以外の登記簿の附属書類については、請求人が「利害関係」を有する部分に限って閲覧可能とされていましたが、この「利害関係」が具体的にどのような範囲のものを指すのかは必ずしも明確ではありませんでした。また、プライバシーへの配慮から、登記簿の附属書類に含まれる個々の書類の性質・内容ごとに閲覧の可否をそれぞれ検討すべきとの指摘もありました。そこで、今回の改正では、「利害関係」との要件を「正当な理由」に変更し、閲覧の対象となる文書の性質ごとに閲覧の可否を検討・判断することとしました(121条3項)。なお、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類については当然、閲覧が可能です(121条4項)。
③相続登記の義務化(2024年4月1日施行)
相続(遺言による場合を含みます。)によって不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記(所有権移転の登記)の申請をしなければならないことになりました(76条の2第1項)。遺産分割の協議がまとまったときは、不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内にその内容を踏まえた相続登記の申請をしなければならないこととなりました(76条の2第2項、76条の3第4項等)。正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかったときは、10万円以下の過料の対象となります(164条1項)。施行日前に相続が発生した場合も適用されます。この場合の3年間の履行期間の起算日は、相続登記義務発生日又は施行日のいずれか遅い方です。