最近の法律改正(2023年を中心に)(その1)

2023.03.13

法的支援

昨年Newsletterで既にご紹介したものも含め、2023年を中心に施行される法律改正をまとめました。
1.労働基準法
2.育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以上本号)
3.民法
4.不動産登記法
5.相続土地国庫帰属法
6.個人情報の保護に関する法律
7.消費者契約法
8.消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律
9.消費税法

1.労働基準法
①月60時間を越える労働に対する50%の割増賃金(2023年4月1日施行)
法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働には25%(法定外休日労働と合わせて月60時間を超える部分は50%)、休日労働には35%、深夜労働には25%の割増賃金を支払う必要があります。就業規則でこれより労働者に有利な規定(例えば1日7時間を超える労働について割増賃金を支払う規定)がある場合はそれに従って支払う必要があります。月60時間を超える部分が50%という規定(労使協定により割増賃金の引上げ分の支払に代えて有給の休暇を付与することも可能)は中小企業にも2023年4月1日から適用されます。なお、管理監督者については、超過労働と休日労働に対する割増賃金の支払は不要ですが、深夜労働に対する割増賃金の支払は必要です(労働基準法37条1項、3項、4項)。
②賃金通過払の例外(デジタルマネー)(2023年4月1日施行)
賃金の支払方法については、通貨のほか、労働者の同意を得た場合には、銀行その他の金融機関の預金又は貯金の口座への振込み等によることができることとされています(労働基準法24条1項)。キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、資金移動業者の口座への資金移動を給与受取に活用するニーズも一定程度見られることも踏まえ、2023年4月1日以降、使用者が、労働者の同意を得た場合に、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払(いわゆる賃金のデジタル払い)ができることになります(労働基準法施行規則7条の2)。
③消滅時効の延長(2020年4月1日施行)
2020年4月1日以降に支払日が到来する賃金請求権(非常時払、休業手当、出来高払の保証給、割増賃金、年次有給休暇中の賃金を含みます。)の消滅時効期間が2年から5年(当面は3年)に延長されます(労働基準法115条)。退職金請求権(5年)は変更ありません。労働者名簿、賃金台帳、雇入れ書類、解雇書類、災害補償書類、賃金書類等の書類の保存期間が3年から5年(当面は3年)に延長されます(労働基準法109条)。付加金(解雇予告手当、休業手当、割増賃金、年次有給休暇中の賃金の支払いがされない場合)の請求期間が2年から5年(当面は3年)に延長されます(労働基準法114条)。

2.育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(「育児介護休業法」)(2023年4月1日施行)
常時雇用する労働者が1000人超の事業者は、前事業年度における男性の育児休業等の取得割合(育児休業等を取得した男性労働者/配偶者が出産した男性労働者)又は育児休業等と育児目的休暇の取得割合(育児休等を取得した男性労働者+育児目的の休暇制度(年次有給休暇を除く。)を利用した男性労働者/配偶者が出産した男性労働者)を年1回公表することが義務づけられます(育児介護休業法22条の2)。これまでは、厚生労働大臣によって「プラチナくるみん認定」を受けている企業のみが、育児休業の取得状況の公表を義務付けられていました。
(<https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/001122221.pdf>)