少子化問題の本質を考える(その2)

2023.02.20

子育て支援

現国会でも議論されている少子化問題についての一考察です。
1.少子化の現状
2.少子化がもたらす諸問題(以上前号)
3.少子化の背景
4.海外の状況
5.解決の方向性
6.結婚しない理由
7.婚姻数増加の方策
8.婚外子割合増加の方策
9.特効薬は何か
10.最後に

3.少子化の背景
少子化が急速に進んだ背景としては、以下の事情が考えられます。
(1) 婚姻数の減少
2021年の婚姻件数は50万1116組で前年より2万4391組減少し戦後最小となりました(厚生労働省令和3年人口動態統計月報年計)。
(2)未婚化
生涯未婚率(50歳時点で未婚の人の割合)は、1970年には男性1.7’%、女性3.3%でしたが、2015年には男性23.4%、女性14.1%まで増えています(国立社会保障・人口問題研究所)。男性の4.2人に一人、女性の7人に一人が生涯結婚しないことになります。
(3) 晩婚化
初婚年齢は、1947年の夫26歳、妻23歳から上昇を続けており、2021年は夫31.0歳、妻29.5歳でした(厚生労働省令和3年人口動態統計)。精子は年をとらないのに対し卵子は年をとるし数も減ります(出生時200万、思春期に20万ないし30万、閉経時はほぼゼロ)ので、晩婚化により妊娠の可能性は低くなるという関係にあります。
(4) 女性の社会進出、キャリア形成(大学進学率と平均初婚年齢)
女性の社会進出が進み、結婚・出産・育児よりもキャリア形成を優先する女性が増えたことで、女性の未婚化・晩婚化を進めていると考えられます。
(*)完結出生児数(結婚持続期間15年乃至19年の夫婦の平均子供数)は、1940年の4.27人から低下して1972年に2.20人になって以降は安定的に推移しており、2.09人(2005年)、1.96人(2010年)、1.94人(2015年)となっています(国立社会保障・人口問題研究所)。意外にも、夫婦の間に生まれる子供の数は過去約50年間で大きな変動はないということです。
(5)非正規労働者数の増加
正社員として終身雇用制度のもとで安定した人生設計を描けるという社会モデルは崩れつつあり、非正規労働者の割合は1989年の19.1%(男性8.7%、女性36.0%)から2019年は38.3%(男性22.9%、女性56.0%)に増加しています(総務省「労働力調査特別調査」「労働力調査詳細集計」)。特に、15歳から24歳までの非正規労働者の割合は1990年の20.5%から2014年は48.6%に、25歳から34歳までの非正規労働者の割合は1990年の11.7%から2014年は28.0%に増加しており、適齢期世代の非正規労働者が増えています(総務省統計局「統計Today No.97」)。
適齢期世代の非正規労働者の増加は、同世代の経済力の低下を意味します。平均賃金は、正規労働者 323.4 千円に対し非正規労働者 216.7 千円(男性は正規労働者 348.8 千円に対し非正規労働者241.3 千円、女性は正規労働者270.6 千円に対し非正規労働者195.4 千円)であり、賃金格差は正規労働者を100とすると非正規労働者は67.0(男性 69.2、女性 72.2) となっています(厚生労働省令和3年賃金構造基本統計調査)。
(*)非正規労働者と正規労働者の間の賃金格差については、2021年4月1日からパートタイム・有期雇用労働法に基づく非正規労働者・派遣労働者の均衡待遇・均等待遇の原則が導入されました(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条9条、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律30条の3第2項)。しかしながら、2021年10月時点では、総じて「必要な見直しを行った・行っている、または検討中」の企業が4割超であったのに対し、約5社に一社(19.4%)が依然として「対応方針は、未定・わからない」状態にとどまっています(独立行政法人労働政策研究・研修機構「同一労働同一賃金の対応状況に関する調査」)ので、賃金格差の是正が進むかは今後の課題です。