少子化問題の本質を考える(その1)

2023.02.6

子育て支援

現国会でも議論されている少子化問題についての一考察です。
1.少子化の現状
2.少子化がもたらす諸問題(以上本号)
3.少子化の背景
4.海外の状況
5.解決の方向性
6.結婚しない理由
7.婚姻数増加の方策
8.婚外子割合増加の方策
9.特効薬は何か
10.最後に

1.少子化の現状
日本の出生数は、第一次ベビーブーム期(1949年270万人)と第二次ベビーブーム期(1973年209万人)の二つの山の後は減少傾向にあり、2016年以降は100万人を下回っており、2021年は81万人(6年連続過去最低を更新)でした。
また、合計特殊出生率(出生年の異なる集団の年齢別出生率の合計で、一人の女性が生涯に生む子供の数)は、第一次ベビーブーム期は4を超えていましたが、1950年頃からは2前後で推移していたものの、1974年には人口置換水準(長期的に人口が増加も減少もしない出生水準)を下回り、2005年には1.26と過去最低を記録しました。その後は緩やかな上昇傾向にあったものの2016年以降は再び低下し、2021年は1.30となっています(厚生労働省令和3年度人口動態統計特殊報告)。

2.少子化がもたらす諸問題
急速な少子化(及び高齢化)によって様々な問題が発生します。
(1)労働人口の減少
現在のペースで少子化が進み女性の社会進出や若者の就職率等の問題を解決しない場合は、日本の労働人口は、6426万人(2012年)から5584万人(2030年)、さらに4228万人(2050年)と、40年足らずの間に約3分の2まで減少します(総務省「労働力調査」)。
(2)産業力の低下、国内産業の空洞化
労働人口の減少により産業の担い手が減少します。そのため、産業を継続すること自体が困難となり、生産拠点を海外にシフトすることも検討せざるをえなくなり、産業力の低下や国内産業の空洞化につながります。
(3)消費減少による経済力低下
消費人口の減少により国内市場が縮小します。そのため、国内での売上が減少し、日本の経済力は低下することになります。
(4)社会保障制度の破綻
現役世代の人口減少により、社会制度が破綻するおそれがあります。高齢者一人を支える現役世代の人数は2020年時点で1.9人ですが、合計特殊出生率が2の場合は2060年には1.5人にとどまるものの、合計特殊出生率が1.35の場合は2060年には1.2人となります(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」2012年1月参照)。二人で支える状況から一人で支える状況(肩車状態)になるということであり、もはや社会保障制度を維持することが困難となります。
(5)限界集落の増加・集落の消滅
少子高齢化が進めば、限界集落(65歳以上の高齢者が総人口の過半数を占める集落)が増加します。泥棒に入られても駐在さんがいない、火事が発生しても消防士がいない、生活物資を運ぶ人がいない等の機能不全により、集落自体が消滅する可能性も高まります。