家庭の法律基礎知識(相続編)(その1)

2023.01.9

法的支援

ビジネスの世界だけでなく家庭内でも、法律に従った対応が必要な場合があります。そこで、このシリーズでは、家庭内のもめごとに対応する上で知っておいていただきたい法律の基礎知識を概説します。本編は相続に関するものです。

1.相続人
2.相続の単純承認・限定承認・放棄
3.相続分(以上本号)
4.遺産分割
5.共同相続における権利承継の対抗要件
6.遺言
7.配偶者の居住権
8.遺留分
9.特別寄与料

1.相続人
相続は、人が亡くなることにより亡くなった人(「被相続人」)の住所地で開始します(882条、883条)。
相続人(死産でない胎児を含みます。)は、①被相続人の配偶者及び子、②被相続人の配偶者及び直系尊属、③被相続人の配偶者及び兄弟姉妹の順に決まります。被相続人の子又は兄弟姉妹が相続開始前に死亡した場合はその子が代襲して相続人となります(886条ないし890条)。但し、遺言の偽造・隠蔽等の欠格事由がある場合及び被相続人に対する虐待等の非行があり排除された者は相続人となれません(891条、892条)。

2.相続の単純承認・限定承認・放棄
相続人は、原則として自己のための相続開始を知ったときから3ヶ月以内に、単純承認、限定承認(相続財産の限度で被相続人の債務及び遺贈を弁済)又は放棄(相続人とならない)のいずれかをしなければなりません。限定承認及び放棄は家庭裁判所に申述する方法によります。上記3ヶ月の期間内に限定承認又は放棄をしない場合その他一定の場合は、単純承認をしたものとみなされます。単純承認をした相続人は無限に被相続人の権利義務を承継します(915条ないし939条)。

3.相続分
相続人は被相続人の一切の権利義務(一身専属権を除く。)を承継します(896条)。相続人が複数ある場合は、各共同相続人は相続分に応じて被相続人の権利義務を承継しますが、相続財産は遺産分割や遺言等に従って分割されるまでの間は共同相続人の共有となります(898条、899条)。
相続分は、遺言による相続分の指定がある場合はそれに従い、遺言による相続分の指定がない場合は法定相続分に従います。法定相続分は、上記①の場合は配偶者及び子がそれぞれ2分の1,上記②の場合は配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1、上記③の場合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。子、直系尊属又は兄弟姉妹が複数いる場合は等分します。代襲相続人の相続分はその直系尊属の相続分と同じです(900条ないし902条)。被相続人の債権者は、遺言による相続分の指定がある場合であってもそれを承認しない限り、法定相続分に応じて権利を行使できます(902条の2)。
相続分は、以下の特別受益と寄与分による修正を受けます。
(1)特別受益
共同相続人が遺贈(遺言による贈与)を受けた場合又は婚姻、養子縁組若しくは生計の資本として生前贈与を受けた場合は、当該贈与を受けた額(「特別受益」)を相続開始時の相続財産とみなして算定した相続分から特別受益額を控除します(903条)。例えば、相続財産が5000万円で相続人が配偶者と子一人の場合で子が1000万円の生前贈与を受けたときは、子の相続分は2000万円(=(5000+1000)÷2-1000)となります。
(2)寄与分
共同相続人が被相続人の財産の維持増加について特別の寄与(労務提供、財産給付、療養看護等)をした場合は、相続開始時の相続財産から寄与分を控除します。寄与分は共同相続人間の協議で決まらない場合は家庭裁判所が定めます(904条の2)。例えば、相続財産が5000万円で相続人が配偶者と子一人の場合で子が1000万円の寄与分を認められたときは、子の相続分は3000万円(=(5000-1000)÷2+1000)となります。