カーボンゼロ(Ⅲ)……化石燃料もバイオマス燃料(完)

2022.12.26

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化石燃料と言われる石炭・石油・天然ガスは、1億年程度以前の生物の死骸から出来ているというのが定説となっています。まさに、生物を原料としているバイオマス燃料そのものです。ですが、なぜ化石燃料(及びそれを原料とするプラスティック)は、地球温暖化対策の最大のターゲットとされているのでしょう。

今回は木材(これを原料とする紙にも言えることです)について考えてみます。間伐材・端材・廃材が、燃料とする木材の多くでしょう。因みに、時には皆伐(ある範囲をすべて伐採)を行った樹木も使われるでしょうが、これは今回の話の中では端材と同様です。
まず間伐材ですが、これは森林の成長過程の中で、密集化を防ぐために間引きされていくものですが、これをすることにより森林の活性化(CO₂吸収の維持・拡大も)が図られますし、間引きされる間伐材は比較的樹齢の短いものと考えられます。また、これにより森林の湿度が低下し温室効果がCO₂の20倍程度あるメタン(CH₄)の発生リスクも下げることが出来ます。次に端材ですが、これは樹木から成型された木材を作成する際に発生する成型とならない部分です。したがって、おそらく50年程度に渡ってCO₂を蓄えたものです。最近、環境配慮の面も含め木材で作られる弁当箱として“曲げわっぱ”も注目されていますが、これで有名な秋田産のものは樹齢150年以上の秋田杉を原料としているようですから、その端材も産業革命ごろから延々とCO₂を蓄えたものとなります。最後に(木材由来の)廃材ですが、これは建物等に利用され、それが役目を終えて廃棄する際に発生されるものです。建物として50年程度利用されていたとすると、約100年前から50年前までの50年間CO₂を蓄えその後50年保持していたとも考えられます。したがって、資源の有効利用という側面は考慮に入れず温室効果ガス(CO₂)排出という面だけ見ると、間伐材を除くと過去長きにわたり蓄積したCO₂を現在排出してしまうということとなり、何ら化石燃料と変わらないとも言えます。最近増えている使い捨てのストローをプラステック製から紙製に変えるというのも無意味、もしくは紙製ストローの方が、体積が増加する分だけ温室効果ガス排出の増加に繋がっているとも言えます。
ただ、この二つには決定的な違いがあります。皆さんも気が付いていると思いますが、人知で、CO2を固定化するために化石燃料を再生することは出来ませんが、人の力によって森林を再生しCO₂を吸収し続けさせることが出来るということです。簡単ではありませんがCO₂の吸収力を増加させることさえ出来るかもしれません。ですから、木材については使用するということに留まらず、その出所がキチンと管理されてCO₂の吸収力の維持・増加が図られているかどうか、例え皆伐であってもその後植樹がなされて再生が図られているか等を監視、少なくとも皆で関心を持っていくことが重要です。ビジネスの世界でも、時流に乗ることも重要ですが、たまには立ち止まって本質を考える習慣をつけることを心に留めておいてほしいものです。ところで、バイオマス燃料(木質だけでなく)発電には、別の問題点もあります。バイオである宿命で燃料に窒素(N)が含まれているため、程度はともかくCO₂の約300倍の温室効果がある亜酸化窒素(N₂O)が発生することが避けられないということです。これがために、温室効果ガス排出削減対策としてバイオマス発電停止を検討している企業も出てきています。
今もウクライナ危機により価格高騰対策として化石燃料消費に補助金を出すなどカーボンゼロに対しては逆行する動きも出ており、この課題については未だ他の課題との優先度合・目標・過程とも定まっているとは言えませんが、このことに限らず不透明な社会状況の中で、皆さんとそれを共有して、一緒に取り組んでいく機会を持てれば幸甚と考えておりますので、よろしくお願いいたします。