家庭の法律基礎知識(離婚編)(その1)

2022.12.19

法的支援

ビジネスの世界だけでなく家庭内でも、法律に従った対応が必要な場合があります。そこで、このシリーズでは、家庭内のもめごとに対応する上で知っておいていただきたい法律の基礎知識を概説します。本編は離婚に関するものです。括弧内の条文は民法の条文を指します。

1.離婚の現状
2.離婚原因
3.離婚に際して定める事項(以上本号)
4.弁護士に相談するにあたって

1.離婚の現状
離婚件数は、昭和38年以降増加し平成14年には約29万組となったが、平成15年以降は減少傾向が続いており、令和2年は19万3000組でした。令和2年の「年齢別婚姻率の 合計」(1人の男または女がその 年齢別婚姻率で一生の間に結婚をするとしたときの結婚回数に)は男が 0.79女が 0.84 であり、令和2年の「年齢別離 婚率の合計」(1人の男または女 がその年齢別離婚率で一生の間に離婚をするとしたときの離婚回数)は男が 0.26、女が 0.27 であるので、結婚に対する離婚の割合は男女とも 0.32 、即ちおよそ結婚した3組に1組が離婚していることになります(厚生労働省令和4年度人口動態統計特殊報告)。

2.離婚原因
夫婦は、協議上の離婚又は裁判上の離婚をすることができます(763条、770条)。
裁判上の離婚事由は、①不貞行為、②悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④回復の見込みのない強度の精神病、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由の5つに限られます。但し、裁判所は、①ないし④の事由がある場合であっても一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認める場合は、離婚の請求を棄却できます。原則として有責配偶者からの離婚請求は認められません(最判昭和27・2・19)が、長期間別居している場合は特段の事情のない限り有責配偶者からの離婚請求が認められる余地があります(最判昭和62・9・2、最判平成6・2・8)。テレビのバラエティー番組で離婚できるかどうかがクイズ形式で出題される場合がありますが、法定離婚事由は上記の通り限定されており、裁判上の離婚は簡単ではないことを認識すべきです。協議上の離婚原因は限定されていないので、単なる「性格の不一致」であっても協議が成立すれば問題ありません。

3.離婚に際して定める事項
離婚に際しては、以下の事項を定める必要があります。
(1)子の監護
子の監護をすべき者、子との面会その他の交流に関する事項、子の監護費用の分担に関する事項、その他子の監護について必要な事項を、子の利益を最優先して考慮しなければなりません。協議できない場合は家庭裁判所が定めます(766条)。
(2)離婚による復氏
婚姻により氏を改めた夫又は妻は婚姻前の氏に復しますが、離婚から3ヶ月以内に届け出ることにより離婚の際に称していた氏を称することができます(767条)。
(3)財産分与
婚姻中に夫婦で築いた夫婦共有財産を夫婦間で分割清算することになります。協議できない場合は、離婚から2年内に限り、家庭裁判所に対し協議に代わる処分(分与させるべきか並びに分与の額及び方法)を請求できます(768条)。財産分与請求権と慰謝料請求権のいずれかを選択して行使することができます(最判昭和31・2・21)が、財産分与請求権の行使によっても精神的苦痛を慰謝するに足りない場合は別個に慰謝料請求をすることができます(最判昭和46・7・29)。裁判所は、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付を含めて財産分与の額及び方法を定めることができるとされています(最判昭和53・11・14)。分与の割合は財産を築いた貢献度によって決まりますが、一般的には(専業主婦であっても)2分の1ずつです。
(4)祭祀承継
婚姻によって氏を改めた夫又は妻が祭祀を承継した場合は、その権利を承継すべき者を定める必要があります。協議できない場合は家庭裁判所が定めます(769条)。