もし逮捕されたら(その1)

2022.11.7

法的支援

警察のやっかいになるという事態は誰しも是非とも避けたいですが、誤認逮捕も含めてその可能性が皆無という保証はありません。今回は、万一警察に逮捕された場合に備え、知っておいたほうがよい情報です。

1.逮捕後の流れ
2.身柄拘束の問題点
3.被疑者弁護制度(以上本号)
4.当番弁護士制度の運用内容
5.弁護人以外の接見・差入れ

1.逮捕後の流れ
警察は、逮捕後48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留(身体拘束の延長)を裁判所に請求するかどうかを決定します。裁判所は、勾留の必要があると判断した場合は勾留決定をし、勾留の必要がない判断した場合は釈放されます。検察官は、勾留期間(原則10日)内に起訴するかどうかを決定します。起訴されると公判手続に移行し、不起訴処分になると釈放されます。検察官が必要と認めた場合は勾留延長を裁判所に請求し、これが認められると更に勾留期間が10日延長されます。従って、逮捕後3日以内に勾留請求がされ、勾留決定がされるとその後10日間又は20日間警察署に留置され、最大23日間身柄が拘束されることになります。起訴された場合は、保釈されない限り、拘置所で引き続き身柄拘束されます。

2.身柄拘束の問題点
身柄拘束は、逃亡や証拠隠滅を防ぎながら取り調べを行う上で有用ですが、逮捕された人(被疑者)にとってみれば、取り調べに応じなければならないだけでなく、有利な証人や証拠に自由にアクセスすることができず、被害者との示談交渉もできず、孤立無援の状態です。
ほとんどの人にとっては、留置場に閉じ込められて密室での取り調べが繰り返されるので、精神的にも大きなダメージを受けます。万一取り調べの重圧に負けて事実と異なる自白をしてしまうと、自白は重要な証拠となり、公判手続でこれを覆すことは非常に難しいです。
証拠が固まって起訴された後は「被告人」となり、国選弁護制度が適用されて国選弁護人が選任されますが、起訴前の「被疑者」の段階では国選弁護人制度は適用されません。起訴前でも私選弁護人を選任することはできますが、経済的理由等で私選弁護人を選任できない場合もあります。
身柄拘束中の問題点は、起訴するための証拠固めという重要な局面において、被疑者が身体的自由を奪われた圧倒的に不利な状況であるにもかかわらず、無防備であるということです。

3.被疑者弁護制度
このような起訴前の被疑者を保護するため、勾留前については弁護士会の刑事被疑者弁護援助事業(当番弁護士制度)、勾留後については刑事被疑者国選弁護制度を利用することができます。勾留決定は裁判所が行いますので、逮捕後(3日以内に)裁判所に連れて行かれる前は勾留前なので前者、裁判所に連れて行かれて引き続き身柄拘束される場合は勾留後なので後者を利用できます。
①刑事被疑者弁護援助事業(当番弁護士制度)(勾留前)
逮捕されてから勾留されるまでの間で、私選弁護人に依頼するお金がない等の要件を満たす場合には、日弁連が実施する刑事被疑者弁護援助事業を利用して弁護を依頼することができます。また、勾留前は当番弁護士制度(後述)を利用することもできます。
②刑事被疑者国選弁護制度(勾留後)
勾留された後、私選弁護人を依頼する費用がない等一定の条件を満たす方は、国が弁護士費用を負担して、弁護人を依頼する被疑者国選弁護制度を利用することができます。なお、特定の弁護士を指定することはできません。2006年10月から実施されている制度であり、当初は適用範囲が限られていましたが、現在は被疑者が勾留されている全事件に適用されます。
③制度利用の申出方法
上記各制度を利用したい場合は、警察官、検察官又は裁判官に「当番弁護士制度/刑事被疑者国選弁護制度を利用したい。」と言えば足ります。