改正土地所有法制(その5)

2022.08.26

法的支援

1.相隣関係
①隣地使用権 ②竹木の枝の切除等 ③設備設置権及び設備使用権
2.共有等
①共有物を使用する共有者と他の共有者との関係 ②共有物の変更 ③共有物の管理 ④裁判による共有物の分割 ⑤相続財産に属する共有物の分割の特則 ⑥所在等不明共有者の持分の譲渡
3.所有者不明土地建物・管理不全土地建物の管理命令
①所有者不明土地管理命令 ②所有者不明建物管理命令 [以上前号まで] ③管理不全土地管理命令 ④管理不全建物管理命令
4.相続等
①相続財産等の管理 ②相続を放棄した者による管理 ③不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消 ④相続財産の清算 ⑤遺産分割に関する見直し

3.所有者不明土地建物・管理不全土地建物の管理命令
③管理不全土地管理命令
・裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され又は侵害されるおそれがある場合において必要があると認める場合は、利害関係人の請求により、当該土地を対象として管理不全土地管理人による管理を命ずる処分(「管理不全土地管理命令」)をすることができます(264条の9第1項)。裁判所は、管理不全土地管理命令において管理不全土地管理人を選任することとされています(264条の9第3項)。
・管理不全土地管理命令の効力は、その対象とされた土地にある動産に及びます(264条の9第2項)。第三者の有する動産には及びません。
・管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象である土地又は共有持分、同命令の効力が及ぶ動産、並びにその管理処分等により管理不全土地管理人が得た財産(「管理不全土地等」)の管理処分権限を有し、保存行為及び(管理不全土地等の性質を変えない範囲内での)利用・改良を目的とする行為のみ行うことができ、この範囲を超える行為を行うためには裁判所の許可(対象土地の処分には所有者の同意も)が必要です(但し、許可がないことを善意の第三者に対抗できません。)(264条の10)。管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者に対する善管注意義務を負い、複数の共有持分が管理不全土地管理命令の対象となった場合は当該共有持分を有する者全員のために誠実公平に権限を行為する義務を負います(264条の11)。
・管理不全土地管理人の報酬及び費用は、管理不全土地等の所有者が負担します(264条の13)。
④管理不全建物管理命令
・裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され又は侵害されるおそれがある場合において必要があると認める場合は、利害関係人の請求により、当該建物を対象として管理不全建物管理人による管理を命ずる処分(「管理不全建物管理命令」)をすることができます(264条の14第1項)。裁判所は、管理不全建物管理命令において管理不全建物管理人を選任することとされています(264条の14第3項)。
・管理不全建物管理命令の効力は、その対象とされた建物にある動産及び当該建物の所有に必要な建物敷地に関する賃借権等に及びます(264条の14第2項)。第三者の有する動産及び賃借権等には及びません。
・264条の11ないし264条の13の規定は、管理不全建物管理命令に準用されます(264条の14第4項)。

・共同相続人は、5年以内の期間を定めて遺産の全部又は一部の分割をしない旨の契約をすることができ、5年以内の期間を定めて更新することもできますが、その期間の終期は相続開始から10年を超えることができません(908条2項、3項)。審判による遺産分割禁止期間についても同様も規律となりました(908条4項。5項)。この期間制限は、特別受益・寄与分の主張期間の制限と整合させるため趣旨です。