改正土地所有法制(その4)

2022.08.12

法的支援

1.相隣関係
①隣地使用権 ②竹木の枝の切除等 ③設備設置権及び設備使用権
2.共有等
①共有物を使用する共有者と他の共有者との関係 ②共有物の変更 ③共有物の管理 ④裁判による共有物の分割 ⑤相続財産に属する共有物の分割の特則 ⑥所在等不明共有者の持分の譲渡 [以上前号まで]
3.所有者不明土地建物・管理不全土地建物の管理命令
①所有者不明土地管理命令 ②所有者不明建物管理命令 ③管理不全土地管理命令 ④管理不全建物管理命令
4.相続等
①相続財産等の管理 ②相続を放棄した者による管理 ③不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消 ④相続財産の清算 ⑤遺産分割に関する見直し

3.所有者不明土地建物・管理不全土地建物の管理命令
①所有者不明土地管理命令
・裁判所は、所有者又はその所在が不明の土地(土地が複数の共有に属する場合は共有者又はその所在が不明な土地の共有持分)について必要があると認める場合は、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分(「所有者不明土地管理命令」)をすることができます(264条の2第1項)。裁判所は、所有者不明土地管理命令において所有者不明土地管理人を選任することとされています(264条の2第4項)。再度の所有者不明土地管理命令も可能です(264条の2第3項)。
・所有者不明土地管理命令の効力は、その対象とされた土地(共有持分の場合は共有物である土地)にある動産に及びます(264条の2第2項)。第三者の有する動産には及びません。
・所有者不明土地管理命令の対象である土地又は共有持分、同命令の効力が及ぶ動産、並びにその管理処分等により所有者不明土地管理人が得た財産(「所有者不明土地等」)は、所有者不明土地管理人に専属します(264条の3第1項)。所有者不明土地管理人選任が嘱託登記(非訟事件訴訟法90条6項)されることにより取引の安全が図られます。
・所有者不明土地管理人の権限は、保存行為及び(所有者不明土地等の性質を変えない範囲内での)利用・改良を目的とする行為に限られ、この範囲を超える行為を行うためには裁判所の許可が必要です(但し、許可がないことは善意の第三者には対抗できません。)(264条の3第2項)。所有者不明土地に関する訴えについては、所有者不明土地管理人が原告又は被告になります(264条の4)。所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(共有持分を有する者を含む。)に対する善管注意義務を負い、複数の共有持分が所有者不明土地管理命令の対象となった場合は当該共有持分を有する者全員のために誠実公平に権限を行為する義務を負います(264条の5)。
・所有者不明土地管理人の報酬及び費用は、所有者不明土地等の所有者(共有持分を有する者を含む。)が負担します(264条の7)。
②所有者不明建物管理命令
・裁判所は、所有者又はその所在が不明の建物(建物が複数の共有に属する場合は共有者又はその所在が不明な建物の共有持分)について必要があると認める場合は、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として所有者不明建物管理人による管理を命ずる処分(「所有者不明建物管理命令」)をすることができます(264条の8第1項)。裁判所は、所有者不明建物管理命令において所有者不明建物管理人を選任することとされています(264条の8第4項)。再度の所有者不明建物管理命令も可能です(264条の8第3項)。
・所有者不明建物管理命令の効力は、その対象とされた建物(共有持分の場合は共有物である建物)にある動産及び当該建物の所有又は共有に必要な建物敷地に関する賃借権等に及びます(264条の8第2項)。第三者の有する動産及び賃借権等には及びません。
・264条の3ないし264条の7の規定は、所有者不明建物管理命令に準用されます(264条の8第5項)。