改正土地所有法制(その3)

2022.07.8

法的支援

1.相隣関係
①隣地使用権 ②竹木の枝の切除等 ③設備設置権及び設備使用権
2.共有等
①共有物を使用する共有者と他の共有者との関係 ②共有物の変更 ③共有物の管理 ④裁判による共有物の分割 [以上前号まで] ⑤相続財産に属する共有物の分割の特則 ⑥所在等不明共有者の持分の譲渡
3.所有者不明土地建物・管理不全土地建物の管理命令
①所有者不明土地管理命令 ②所有者不明建物管理命令 ③管理不全土地管理命令 ④管理不全建物管理命令
4.相続等
①相続財産等の管理 ②相続を放棄した者による管理 ③不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消 ④相続財産の清算 ⑤遺産分割に関する見直し

2.共有等
⑤相続財産に属する共有物の分割の特則
・共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で遺産分割をすべきときは、共有物分割訴訟による分割はできないのが原則です(258条の2第1項)。これは判例を確認する規定です。
・この特則として、共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始から10年を経過したときは、当該共有物の持分について遺産分割請求があり相続人が共有物分割訴訟による分割に異議(裁判所からの通知後2ヶ月以内に限る。)を申し出た場合を除き、当該共有物の持分について共有物分割訴訟による分割ができます(258条の2第2項、3項)。
⑤所在等不明共有者の持分の取得(新設)
・不動産が複数の共有に属する場合において、他の共有者又はその所在が不明であるときは、共有者は、当該他の共有者(「所在等不明共有者」)の持分取得の裁判を申し立てることができます(262条の2第1項)。申立をした共有者が複数の場合は、各共有持分割合に応じて按分した持分を取得することになります。申立者は裁判所が定める金額を供託する必要があります(非訟事件訴訟法87条5項)。
・所在等不明共有者の持分に係る不動産についての共有物分割訴訟又は遺産分割調停・審判が係属していてその他の共有者が異議を申し立てた場合、並びに所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合において相続開始から10年を経過していない場合は、所在等不明者の持分取得の裁判をすることができません(262条の2第2項、第3項)。
・所在等不明共有者は、持分を取得した共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払い請求権を取得します(262条の2第4項)。
・所有権以外の不動産の使用収益権が数人の共有に属する場合も同様です(262条の2第5項)。
⑥所在等不明共有者の持分の譲渡(新設)
・所在等不明共有者がいる場合であっても共有物全体を売却できるようにするための制度が新設されました。
・不動産が複数の共有に属する場合において、所在等不明共有者がいるときは、共有者は、所在等不明共有者以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができます(262条の3第1項)。
・所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合において相続開始から10年を経過していない場合は、所在等不明者の持分譲渡の裁判をすることができません(262条の3第2項)。
・所在等不明共有者は、持分を譲渡した共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じ按分した額の支払い請求権を取得します(262条の3第3項)。
・所有権以外の不動産の使用収益権が数人の共有に属する場合も同様です(262条の3第4項)。