改正土地所有法制(その2)

2022.06.17

法的支援

1.相隣関係
①隣地使用権 ②竹木の枝の切除等 ③設備設置権及び設備使用権 [以上前号]
2.共有等
①共有物を使用する共有者と他の共有者との関係 ②共有物の変更 ③共有物の管理 ④裁判による共有物の分割 ⑤相続財産に属する共有物の分割の特則 ⑥所在等不明共有者の持分の譲渡
3.所有者不明土地建物・管理不全土地建物の管理命令
①所有者不明土地管理命令 ②所有者不明建物管理命令 ③管理不全土地管理命令 ④管理不全建物管理命令
4.相続等
①相続財産等の管理 ②相続を放棄した者による管理 ③不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消 ④相続財産の清算 ⑤遺産分割に関する見直し

2.共有等
①共有物を使用する共有者と他の共有者との関係
・共有物を使用する共有者は、別段の合意のある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うこと、共有者は共有物の使用について善管注意義務があること明確化されました(249条2項、3項)。
・相続財産について共有に関する規定を準用する場合は、法定相続分(又は指定相続分)により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とされます(898条2項)。
②共有物の変更
・改正前は「各共有者は他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることができない」とされていましたが、変更の意義及び範囲が明確ではありませんでした。改正後は、形状又は効用の著しい変更を伴わない変更(「軽微な変更」)については持分価格の過半数の同意が必要、軽微でない変更については他の共有者全員の同意が必要という規律になりました(251条1項、252条1項)。
・他の共有者又はその所在が不明な場合は、その他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることもできます(251条2項)。
③共有物の管理
・共有物を使用する共有者がいる場合であっても、各共有者の持分価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決定することができます(252条1項)。但し、共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼす場合はその承諾を得る必要があります(252条3項)。
・他の共有者又はその所在が不明な場合及び他の共有者が相当期間内に共有物の管理に関する事項について賛否を明らかにしない場合は、その他の共有者の持分価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決定することができる旨の裁判をすることもできます(252条2項)。
・共有者は、持分価格の過半数による決定により、一定の期間(山林10年、他の土地5年、建物3年、動産6ヶ月)内の賃借権その他の使用収益を目的とする権利(地上権、地役権等)を設定することができます(252条4項)。
・共有者は、持分価格の過半数の決定により共有物の管理者を選任・解任することができます(252条1項)。共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為を行うことができ(共有物の軽微でない変更については共有者全員の同意が必要)(252条の2第1項)、共有者又はその所在が不明な場合は他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができ(252条の2第2項)、共有者が決定した共有物の管理に関する事項に従って職務を行わなければならず(252条の2第3項)、これに違反した管理者の行為は共有者に対して効力を生じません(但し、善意の第三者には対抗できません。)(252条2第4項)。
④裁判による共有物の分割
・共有物の分割について協議が整わない場合のほか、協議不能の場合も共有物分割を裁判所に請求できるようになりました(258条1項)。
・裁判による共有物の分割方法として、競売のほか、現物分割の方法及び賠償分割の方法(共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法)が明文化されました(258条2項)。
・裁判所は、共有物分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができます(258条4項)。