カーボンゼロII………メタン(CH₄)・天然ガス(完)

2022.05.13

企業支援

今回は前回を踏まえた上で、メタンの削減がなぜ難しいか、考えてみたいと思います。測定そのものが困難なため正確な割合が特定されているとは言い難いですが、発生源として一番多いのは自然由来で、これで半分程度といわれています。日本でも房総半島では地面から発生しているメタンを集めて家庭用に利用している地域もありますし、CO₂の吸収源として期待されている森林もメタンは吸収も発生もしており、条件次第では発生源と言われています。また、地球温暖化が進むことで、シベリア等の永久凍土(ツンドラ)が解けて閉じ込められているメタンが放出されることも話題になったりもします。これらの発生源に対して、発生量の把握もですが、効果的な削減を実現する方策が十分見つかっていないのが実態でしょう。更に、その他の発生源としては、化石資源の採掘・消費によるもの、農畜産業によるもの、廃棄物からの発生の三つが主たるものであり、この4つでほぼ大部分です。原油採掘時の随伴ガス、天然ガス採掘時・消費時の漏洩等は、化石燃料の使用を削減することで減少させることができますが、農畜産業、廃棄物からの発生を減少させることは、他の問題とのコンフリクトを解決していく必要があり、カーボンゼロ以外への配慮も重要です。農畜産業では、よく牛のゲップが話題になりますが、水田からとか有機肥料からとかも発生します。牛を食べなければいいと問題ではなく、人間が食料を自然由来から摂取しようとする限り、ある程度必然的に発生します。地球温暖化対策も17の持続可能な開発目標(SDG‘s)における重要な課題ではありますが、これは、SDG’sの①貧困をなくそう、②飢餓をゼロに に直結し、どう調整していくか難しい課題です。(尚、地球温暖化対策は主として⑬気候変動に具体的対策を に対応します)また、もう一つの廃棄物については、日本では大部分が焼却処理されていますのでメタンの発生量は限定的ですが、世界的には多くが埋立処理されており、それが自然界で分解されていく過程でメタンが発生しています。焼却処理すれば多くは解決しますがそのような整備をすることが現実的かどうか、また焼却するとほぼ同等のCO₂が発生する(温室効果という面では20分の1程度となりますが)ことも考慮に入れる必要があります。これらは、ビジネスでも直面する複数の課題を解決していくために、どのようなバランス感覚で取り組むか難しい対応に迫られているのと同様と言えるでしょう。
最後に、現状世界の地球温暖化対策を主導している欧州で欧州委員会から本年2月にEUタクソノミー(EUの持続可能な地球環境のための活動を推進する仕組み)に関して、原子力と並んで天然ガスがこれに資するものとされる興味深い発表が行われました。先に述べた二つの側面のうち、天然ガスは燃焼によりCO₂が発生しますが、他の化石燃料に比べてCO₂の発生を抑制する側面を重視したということでしょう。2050年に向けて最終的にどうするかはわかりませんが、理想・将来のあるべき姿と現実・現在の実態とのバランスを考えたうえで、足元のCO₂削減手段を幅広く確保するという現実的な対応を行ったと考えられます。ビジネスの世界でも、一つの目標(理想)を設定すると、それのみを考えるあまり身動きが取れなくこともありますので、そこに陥らないような行動をとっていくことは大切です。また、一つの事にわき目も振らずに邁進できることは少なく(勿論そうせざる得ない時もありますが)、バランスを考えていかねばならないことが多くあり、その局面局面で判断を求められます。また、判断することもですが、そもそもバランスを考えて判断しなければいけないことに気づくことの方が難しいという側面もあります。私たちとしては、皆さんの適確な判断を支援したいと考えていますので、ご相談いただければ気づきのキッカケも含めてサポートさせて頂きます。