カーボンゼロII………メタン(CH₄)・天然ガス(その1)

2022.04.15

企業支援

カーボンゼロII………メタン(CH₄)・天然ガス(その1)

前シリーズ((2021年9月10日、27日、10月11日付News Letter参照))でアンモニア(NH₃)を取り上げましたが、それ以降も温室効果ガス削減に資する燃料としては益々話題に上るようになりました。その際、アンモニア燃焼に際して発生する亜酸化窒素(N₂O) …二酸化炭素(CO₂)に対して約200倍の温室効果がある…について触れましたが、CO₂以外の温室効果ガスということで、今回は、直近のウクライナ情勢や昨年のCOP26での新しい動きを受けて、CO₂に次ぐ温室効果ガスであるメタン(CH₄)について触れていきます。これら3種で、水蒸気(H2O)を除く温室効果ガスの大部分を占めています。因みに、CO₂だけだと4分の3程度にしかなりません。
メタンは、CO₂の20倍程度の温室効果をもたらすガスとしての一面と、他の化石燃料に比べて炭素(C)が少なく、CO₂発生を相対的に抑える燃料としての一面との両面から注目されています。ウクライナ情勢でロシアから欧州への供給が懸念されている天然ガス(NG)の大部分の成分はメタンですし、その代替として欧州が調達を増やそうとしている液化天然ガス(LNG)も同様です。ドイツ等では、地球温暖化対策としての国内炭での石炭火力発電の削減、東日本大震災を受けての原子力発電の削減を進める中で、主としてロシアからのパイプラインを利用した天然ガスによる発電を再生可能エネルギーと並んで急速に増加させました。その結果、ロシアに社会基盤を依存することとなっています。現在を生き抜くためのエネルギー安全保障と将来の生存可能性を高めるためのカーボンゼロとをどうバランスをとって運営していくかのジレンマとも言えます。ビジネスでの世界でも、将来のために投資したいが、投資すると現時点でその負担をどうするか不安になるのと同様、二者択一は出来ず、正解はありませんが、そのバランスを常に念頭に置いて確認・調整していく必要があります。
前段では、時事問題に則してメタンの地球温暖化に貢献する側面の話をしましたが、ここからは、温室効果ガスとしての側面について触れさせていただきます。昨年のCOP26の際に、アメリカとEUの呼びかけで97の国と地域によってメタンを削減する国際的枠組みが発足し、2030年までに排出量を30%削減することを目標に掲げることが合意されました。残念ながら、排出量の大きい中国、インド、ロシア…因みにこの3カ国の排出量の合計は日本の50倍以上…は参加していませんが、同時期にアメリカと中国とでメタン排出削減に向けての協力についての合意もされています。このことは、カーボンゼロとかカーボンニュートラルとか目標を掲げる中で、概念としては勿論すべての温室効果ガスが対象としていても実質的には計測・対策が比較的容易な全体の4分の3しか占めないCO₂のみを対象としており、メタンとか亜酸化窒素は一旦削減することのみに取り組んでいくことを示しているかもしれません。しかし、例えそうであったとしても現実的な取り組みとしてまず実行可能な行動をとることは重要です。勿論最終的な目標に反することはあってはなりませんが、すべてが整ってから行動しようとすれば何もしない結果ともなりかねませんし、少なくとも目標達成が遅れる可能性が高くなります。ビジネスでも、分析の進捗を確認しながらどのタイミングで行動をとるか、そのバランスを確認した上でタイミングを判断していくことは非常に重要なことです。全ての検討が終わってから行動して、後れをとった例も多くあるでしょう。
今回はここまでとし、次回は少し見方を変えて、メタンの削減がなぜ難しいか、から考えてみたいと思います。