IPOをめざそう(その1)~IPOによって得られること

2022.03.24

企業支援

IPOとは、「Initial Public Offering」の略で株式公開とも言われ、「特定の株主が保有している株式を、不特定多数の一般投資家が自由に売買できるようにすること」を指します。株式の売買は証券取引所が設けた株式市場で行われることから、株式上場も同義で使われています。IPOについて数回にわたり説明したいと思います。

1990年代初めにバブルが崩壊し日本経済の停滞がおこり、「失われた10年」と言われました。その後「失われた20年」となり現在30年が経過しようとしていますが、海外諸国と比べ経済の成長は鈍いままです。2010年代の経済成長率は年1.1%とG7諸国の中で最も低く、昨年一人当たりのGDPは年々順位を落とし第24位となってしまいました。

なかでもスタートアップ(創業)の数は近年増加の傾向にあるものの、欧米に比して低い状況です。日本経済を活性化するためには、スタートアップの数を増やし、ユニコーン(時価総額10億ドル超の未公開企業)とまではいかなくても新しい企業を育てていくことが重要です。当社は創業支援を主業にしていますが、微力ながら日本経済の成長につながればと考えています。そして、IPOにより、企業の成長を飛躍的に加速し拡大させることが可能となります。お手伝いをした会社からIPOを実現する会社が出てくれば、望外の喜びであります。

今回はIPOによって得られることについて説明します。

IPOによって得られることの一番大きなことは、資金調達が容易になることです。一般の投資家から株式の申込みを広く募ることが可能となり、成長性が認められれば大きな資金の調達が可能となります。調達した資金を有効に活用することにより、加速度的な成長に繋げられれば理想的な形となります。多くの大企業もそうしたステージを経て現在に至っています。資金の調達という点では、自己資本の充実に加え、次項で説明しますが内部の管理体制についてもお墨付きを得ることになりますから、銀行からの借り入れもより容易になります。また、既存の株主にとっては、資金を回収してキャピタル・ゲインを獲得する機会を得られることになります。

第二に、IPOを行い一般の投資家に株式を保有してもらうには、当然のことながら会社が組織的に適切に運用され、会社の情報が適切に開示される必要があります。例えば不公正な取引が行われれば、会社の存亡にも係わります。そのため、そうしたことが簡単に行えないよう、管理体制を整備し内部統制のしくみを導入する必要があります。また、行き当たりばったりの経営では困ります。計画を立て、計画した予算に実績が届かなければ、対応するため戦略や戦術を考えてもらわなければ困ります。そうしたしくみをビルトインしなければなりません。そして、決算が適切に行われ、公表している数値等に大きな変動があれば、適時に公表していくことが要請されます。決算の公正性を担保するため、監査法人による監査を受ける必要があります。こうしたことは手間がかかりコストもかかりますが、それにより外部の信頼を得ることが可能となり、会社の永続性も高まることになります。

第三に、優秀な人材も確保し易くなります。IPOにより、信頼度や知名度は向上します。上場企業であることで、社員の住宅ローンも借りやすくなるでしょう。また、株式を利用したインセンティブの付与も可能となります。そのほか、海外への進出や大手企業との提携なども、よりやり易くなります。

一方、デメリットは何でしょうか。先に説明したように上場維持のため手間やコストがかかります。オーナー社長にとっては、自分の好きなようにやれたのが、手かせ足かせがかけられたように思われるかもしれません。絶えず投資家からのプレッシャーを受けることになり、中長期的な経営がし難しくなるといった声もあります。社会的な責任も一層大きくなります。最も大きな点は株式を公開した時点で、会社は買われてしまうかもしれません。勿論、会社がうまく経営されていると判断されていれば、株式市場で高く評価されているはずで、そのようなことは起こりません。

それでは、どんな企業ならIPOできるのでしょうか。創業して間がなくても可能でしょうか、売上や利益はいくら必要でしょうか。IPOするためにはどんな作業が必要でしょうか。次回以降、IPOに必要な要件やスケジュール、手続きなどについて説明していきたいと思います。