経営者が押さえておくべき最近の法律改正(2021年施行分)(完)

2022.03.21

法的支援

2021年に施行された改正法のうち経営者として押さえておくべきと思われるものをまとめました。便宜上、2020年施行のものも記載しています。本文中の条文番号は各法律の条文を示しています。
目次:
1.著作権法
2.意匠法
3.労働者派遣法
4.高年齢者雇用安定法
5.労働施策総合推進法(以上前号まで)
6.パートタイム・有期雇用労働法
7.会社法
8.賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律
9.特定商取引法(以上本号)

6.パートタイム・有期雇用労働法(2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日)施行)
短時間労働者(パート・アルバイト等)・有期雇用労働者の待遇と通常の労働者の待遇との間で、①業務の内容及び責任の程度(「職務の内容」)、②職務の内容及び配置の変更の範囲並びに③その他の事情のうち、当該待遇の性質及び目的に照らして適切なものを考慮して不合理と認められる相違を設けることが禁止されます(「均衡待遇」)。また、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間労働者・有期雇用労働者について、雇用の全期間を通じて職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれる場合は、短時間労働者・有期雇用労働者であることを理由とする待遇の差別的取扱が禁止されます(「均等待遇」)(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条、9条)。
参考:短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(厚生労働省告示430号)(https://jsite.mhlw.go.jp/yamagata-roudoukyoku/content/contents/000478586.pdf)

7.会社法(2021年3月1日施行)
①株主総会資料の電子提供制度の創設(株主総会参考書類、議決権行使書面、計算書類、事業報告書、連結計算書類をウェブサイトで提供可)(325条の2ないし325条の6)、②株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備(1日との株主が提案できる議案数は10まで)(305条4項)、③取締役の報酬に関する規律の見直し(公開会社且つ大会社である監査役会設置会社で有価証券報告書の提出義務のある会社及び監査等委員会設置会社の取締役の個人別報酬の決定方針を定める義務、取締役に付与する株式等の数の上限につき株主総会決議が必要、上場会社が取締役報酬として発行する株式について出資履行は不要)(361条7項、361条1項、202条の2等)、④会社補償及び役員等のために締結される保険契約に関する規律の整備(規定創設、役員賠償責任保険契約に関する規定創設)(430条の2、430条の3)、⑤社外取締役の活用等(社外取締役に対する業務執行の委託可、公開会社且つ大会社である監査役会設置会社で有価証券報告書の提出義務のある会社の社外取締役の設置義務化)(348条の2、327条の2)、⑥社債管理に関する規律の見直し(社債管理補助資格者に社債管理の委託可)(714条の2)、⑦株式交付制度の創設(完全子会社とならない場合でも自社株式を子会社化する会社の株主に交付可)(2条32の2号、774条の2等)等、幅広い改正がされました。

8.賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(新設)(2021年6月15日施行)
賃貸住宅管理業について登録が義務付けられました(3条)。登録を受けた賃貸住宅管理業者は、業務管理者の選任、管理受託契約締結前の重要事項の説明、財産の分別管理、委託者への定期報告等が義務づけられます(12条、13条、14条、16条、20条等)。
特定賃貸借契約の適正化のための措置(サブリース業者と所有者間の賃貸借契約の適正化のための規制に係る部分:誇大広告等の禁止、不当な勧誘等の禁止、締結前書面交付、締結時書面交付等)(2条4項、5項、28条ないし36条)は2020年12月15日に施行されています。
参考:(https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001373100.pdf)

9.特定商取引法(2021年7月6日施行)
販売業者が売買契約に基づかないで一方的に相手方に送り付けた商品(送り付け商法)について、販売業者が返還請求できない規定が整備されました。送り付けには、相手方の留守の間に商品を置いていった場合や相手方の了解なしに強引に置いていった場合のように、郵便や運送等の手段によらない場合も含まれます。
相手方は施行日以降に送り付けられた商品を即座に処分できるようになりました(以前は14日間の保管が必要でした)(59条)。売買契約が成立していないので相手方に代金支払義務は発生しません。また、販売業者は、売買契約成立を偽って商品を送付した場合は、送付した商品の返還を請求できないことが明記されました(59条の2)。