新型コロナ時代に生き抜く知恵 ~過去の歴史の教訓から学ぶ~(その2)

2021.12.23

企業支援

1.大規模感染症が起こる理由
① 自然環境の変化(以上、前号)
② 環境破壊
③ 人口増加と都市化(以上、本号)
④ グローバル化
⑤ 栄養・衛生状態
2.大規模感染症の社会的インパクト
① パニックによる差別やデマが拡散しやすい
② 経済活動を弱め、既存の社会的枠組みの見直しがおきやすい
③ グローバル化と大規模感染症

② 環境破壊
自然災害と言いますが、その多くは人為的な環境破壊が原因と考えられています。森林の伐採というわかりやすい自然破壊から、化石燃料によるCO2増加での温暖化など 非可逆的な環境破壊を引き起こしています。こうした人間の活動により、本来ならば、森の奥深くに潜んでいた野生動物が市街地まで進出というニュースは世界の都市で耳にします。人類は文明化とともに感染症というパンドラの箱を、自ら開けていることになります。

環境破壊というわけではありませんが、人為的な操作である家畜の集団飼育も、また感染症拡大を助長する恐れがあります。集団飼育されているために、鳥インフルエンザに感染可能性のある鶏が、何十万ときには何百万羽の単位で一斉に殺処分されるニュースは世界各地で頻発しています。元農林水産大臣が賄賂を受け取ったことが露見して、話題となった家畜の国際飼育基準づくり(アニマルウェルフェア)は、報道当時は飼育ストレスの緩和による健康的な家畜育成の話と理解していましたが、実は感染症対策にも直接関係する大変重要な話を含んでいたと思うと、自分の感染症リスクへの不明さを改めて痛感します。

③人口増加と都市化
過去100年で世界の都市人口は10倍以上に膨れ上がり、都市部を中心とした人口増加は、過密度が増して、ウィルスが感染力を増すゆりかご状態をつくっています。
世界の人口は、西暦1年に3億人、1500年で5億人、1800年で10億人、現在では75億人に達し、2050年には90億人と、爆発的に増加していく見通しです。この急激な人口拡大に試練を与え抑制するような形で、感染症は歴史上間欠的に起きています。
都市化は時代とともに加速し、1950年には30%に過ぎなかった都市人口は、2018年時点で55%に達しています。(国際連合「世界都市人口予測・2018年改訂版から)
都市化が進めば、会食やイベントや移動など人が集中する場所が増加することになります。また、生活インフラとして、大気汚染や水質汚染などの問題が起きやすく、感染病が流行しやすい環境をつくっていくことになります。都市化は今後も加速を続け、2050年には68%に達すると予測されている中で、感染症拡大の危険性を増加させていることを認識しておく必要があります。

人口の集積化による感染症の拡大は、都市化だけの話ではありません。全世界で5000万人以上が亡くなったという悪性インフルエンザのスペイン風邪は、第一次世界大戦下での人の密集で起きています。戦争中であるが故に相手に兵力の弱体化を悟られないよう、交戦国同士が情報を徹底的に隠匿したことで、より事態の悪化を招き、結果的に戦争終結を早めたとも言います。ちなみに、感染が始まった米国やドイツなどがその事実を隠し、遅れて感染した中立国のスペインが事実を隠さずありのままに公表したため、「スペイン風邪」と命名されて後世に不名誉な形で名を残すようになったのは、何とも皮肉な話です。