日米の訴訟制度を比較してみた(その1)

2021.12.13

法的支援

米国は「訴訟天国」と言われることがあります。これに対し、日本では、弁護士は一般の人にとってなじみの薄い存在であり、訴訟に関与したことのない人が大多数と思われます。このような日米の違いの背景事情を検討してみました。

1.現状分析
(1)弁護士数
日本の弁護士数は1991年が14,080人、2020年は42,164人、米国の弁護士数は2013年が1,166,269人、2020年が1,328,692人です(日本弁護士連合会 弁護士白書2020年版)。2006年の新司法試験制度導入等により日本の弁護士数は過去30年で約3倍になりましたが、それでも米国の4%にも及びません。日本の人口が1億2650万人、米国の人口が3億3100万人(いずれも2020年)ですので、弁護士1人当たりの国民の数は、日本が3000人、米国が249人となり、10倍以上の開きがあります。

(2)訴訟件数
日本の民事第一審通常訴訟件数(地方裁判所)は、2008年が199,522件(新件)、192,246件(既済)、105,055件(未済)、2019年が134,934件(新件)、131,560件(既済)、104,060件(未済)です。民事第一審通常訴訟件数(地方裁判所)のうち、過払金等事件数は、2008年が104,992件、2019年が37,731件であり、過払金等事件以外の件数は、2008年が87,254件(既済)、2019年が93,829件(既済)であり、過払金等事件を除けば既済件数は87,000と10,000の間を推移しています(日本弁護士連合会 弁護士白書2020年版)。過払金等事件(*)は2009年前後をピークとして減少しており一過的な特殊訴訟類型であるとすると、これ以外の類型の訴訟件数は、弁護士数が増えたにもかかわらず、大きな変動がないといえそうです。
人口10万人当たりの訴訟件数は日本が651件、米国が3,095件(法社会学(第2版)村山眞維・濱野亮)という報告によれば、人口比の訴訟件数は米国が日本の4.7倍ということになります。
(*)期限の利益喪失約款がある場合に借主が利息制限法が定める利息を超える利息を支払うのは、事実上強制されたもので任意の支払ではないから、「みなし任意弁済」(旧貸金業の規制等に関する法律43条)の要件が満たされないとする2006年1月の一連の最高裁判決によって過払金返還請求が容易になり、大量の宣伝で集客する弁護士等により過払金返還請求訴訟が急増した。

2.背景分析
(1)国民性の違い?
日本で訴訟が少ないのは日本人が元来争いを避ける傾向があるからではないか、という見方もあり得ます。しかしながら、小作争議(*1)の調停受理件数が1925年から1944年までの間に毎年1,500件以上(最大は1936年の7,472件)(農林省「小作年報」第22次農林省統計表)あったことや、労働争議(争議行為を伴うもの)が1918年から1937年までの間に毎年3万件以上(総務省日本長期統計総覧)あったことからすれば、日本人の国民性として争うことに対してアレルギーがあるとは必ずしもいえないと思われます。
(*) 地主から農地を借りて耕作し、小作料を払っていながら耕作権を法によって認められていなかった農民(小作農)が、地主に対して小作料の減免や様々な条件改善を求めて起こした争議