日本型雇用制度はどう変わるか?(その2)

2021.11.30

企業支援

第2弾です。

(4)法制度
1950年代に解雇権濫用法理(使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる)が判例法として確立され(*)、有期雇用契約の更新拒絶についても解雇権濫用法理の考え方が適用されるようになり(**)、法制度上従業員の雇用が保護されることとなりました(現在では、解雇権濫用法理は労働契約法16条、有期雇用契約の更新拒絶については同法19条で明文化されています。)。
(*)日本食塩製造事件(最二小判昭和50年4月25日)、高知放送事件(最二小判昭和52年1月31日)等
(**)東芝柳町工場事件(最一小判昭和49年7月22日)、日立メディコ事件(最一小判昭和61年12月4日)等

(5)小括
以上のほかにも、終身雇用制度と関連する事情(例えば、転職に伴う企業年金の積立金の移管が難しかったこと)もあると思われます。いずれにせよ、終身雇用制度(実際には、もっぱら大企業の男性正社員にのみ当てはまる制度といえますが)は、日本固有の社会的背景を反映するものとして、日本の雇用制度の特色とされていたわけです。

2.終身雇用制度のメリットとデメリット
終身雇用制度のメリットとしては、長期的な視点から人材育成ができる、長期的に人材を確保できる、従業員の忠誠心を養える(従業員の立場からは生活と雇用が安定する)、といった点が挙げられます。幹部候補社員を様々な部署に配置して経験を積ませるという育成システムは、長期雇用を前提とするものです。
終身雇用制度のデメリットとしては、(年功賃金制ゆえ)人件費の調整が難しい、人材が固定化する、女性の労働機会を減少させる(若い従業員の立場からは働くインセンティブが弱くなる)、といった点が挙げられます。

3.終身雇用制度の変容
上記1で述べた終身雇用制度の背景事情は、変わりつつあります。
(1)年功賃金制度
年齢・勤続年齢に応じて増額する「年齢給」と職能資格制度に基づく「職能給」から構成される年功賃金制度は、1990年代初頭のバブル崩壊後の長期経済低迷とグローバル競争時代の到来の中で、年齢給の廃止と職能給への一本化、職能給制度における能力・成績主義の強化、上級管理職への年俸制の導入、業績賞与の設置、生活手当の縮小・廃止等、成果主義の観点から修正されるようになりました。退職金制度を廃止して賃金に上乗せするという企業も現れました。