ニューヨーク州司法試験の思い出(その1)

2021.10.29

法的支援

小室圭さんが受験されたニューヨーク州の司法試験を私も受けたことがあります。

米国の司法試験は州毎で実施され、ニューヨーク州で弁護士活動を行うためにはニューヨーク州の司法試験に合格する必要があります。受験するためには、原則としてロースクールで3年コース(JD)を終了する必要がありますが、外国の法学部を卒業している人等はロースクールの1年コース(LL.M.)を終了すれば足ります。多くの日本人留学生は1年コースを終了して受験しますので、小室圭さんのように3年コースを終了して受験するのは少数派です。ニューヨーク州の司法試験は毎年7月と2月に行われ、7月試験の合格率は例年70~80%といわれていますが、2020年はコロナの影響で7月試験が10月実施となったこともあってか、85%(外国人は70%)だったようです。私が留学していたロースクールでは、3年コース(ほとんどが米国人)の合格率は90%と言われていましたが、1年コース(ほとんどが非米国人)の合格率はそれより低く、私の周りの日本人のうち法曹関係者(裁判官・検察官・弁護士)でない人の合格率は半分くらいでした。今年の合格率は63%と報道されていますが、これが正確だとすると、例年よりは難しかったんですね。

多くの受験生は、5月にロースクールを卒業した後、最初の1ヶ月は司法試験予備校(BarBri)の講義を聴いて勉強します。ニューヨーク市内にある司法試験予備校に通えない受験生には、司法試験予備校の講義内容のビデオが1週間遅れで届きます(現在はオンラインかもしれませんが)。司法試験問題はロースクールで習っていない幅広い分野から問題がでるため、司法試験専門の予備校が作成したテキストで勉強するのが効率的といえます。このテキストは厚さ5センチの電話帳くらいのボリュームがあり、これを2冊、ひたすら暗記することになります。

司法試験予備校の講義(1ヶ月)でテキストを一通り勉強した後、テキストの最初から読み返し始めたのですが、1ヶ月前に講義で習った内容をほとんど覚えていないことに愕然としました。試験まではあと1ヶ月しかないのに。。。2週間かけてテキストの2巡目を終えましたが覚えているのは半分くらいで、さらに1週間かけて3巡目を終えても覚え切れていないという状態でした。最後の1週間をどう過ごしたのかはっきり覚えていません。「ニューヨーク司法試験は、頭の上のたらいに詰め込んだ知識をこぼさないように試験会場まで運ぶようなものだ。」と当時言われていましたが、私の人生で、覚えるべきことを覚えきれないまま受けた唯一の試験、そして忘れがたい試験となりました。