相続法改正(完)

2021.09.21

法的支援

最終回の今回は、以下のポイントについて解説します。

5 相続の効力等に関する見直し(2019年7月1日施行)
(1)特定財産承継遺言等により承継された財産については,登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされている現行法の規律が見直され,法定相続分を超える部分の承継については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないことになりました。
特定の財産を相続させる旨の遺言による権利の承継は登記なくして第三者に対抗できるというのが判例でしたが、遺言の有無内容を知り得ない相続債権者・債務者等や取引の安全を害するおそれがあるため、遺産分割や遺贈の場合と同様に、法定相続分を超える部分については、登記・登録その他の対抗要件を具備しなければ第三者に対抗できないことになりました。法定相続分を超えて相続により債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産分割の場合は当該債権に係る遺産分割の内容)を明らかにして債務者に承継を通知した場合は、共同相続人全員が債務者に通知したものとみなして対抗要件具備が判断されます。
(2)相続対象債務の債権者は、相続分の指定にかかわらず、各共同相続人に対して、法定相続分に応じて権利を行使することができますが、共同相続人の一人に対して指定された相続分に応じた債務承継を承認した場合はこの限りではありません。

6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(2019年7月1日施行)
相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,一定の要件の下で,相続人に対して金銭請求をすることができるようになりました。
相続人以外の者(長男の妻等)は被相続人の介護に尽くしても相続財産を取得することはできませんでしたが、被相続人の親族が被相続人に対して無償で療養看護その他の労務を提供したことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合は、相続人に対して寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払請求ができるようになりました。特別寄与料の額について当事者間で協議が整わない場合は、相続開始・相続人を知ってから6ヶ月以内又は相続開始から1年以内に限り、家庭裁判所に対して協議に変わる処分を請求できます。