フリーランスの保護(その2)

2021.07.19

法的支援

今回は、フリーランス保護に関係する法制度について解説します。

1法制度
フリーランスを保護するための主な法制度としては、①、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(「独占禁止法」)、②、下請代金支払遅延等防止法(「下請法」)、③労働基準法・労働組合法等の労働関係法令があります。
①独占禁止法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000054
独占禁止法で禁止される「不公正な取引方法」には、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」以下のいずれかの行為を行うことが含まれます(同法2条9項5号)。
(1)継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。(2)において同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること
(2)継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
(3)取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること
取引上の地位が優越する事業者がフリーランスに対してその地位を利用して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合は、優越的地位の濫用として、独占禁止法の規制を受けます。
②下請法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=331AC0000000120
資本金1000万円超(*)の事業者が個人に対して製造委託等(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託)をする場合は下請法が適用される可能性があります(下請法2条7項)。(*)製造委託・修理委託については3億円超、プログラム以外の情報成果物作成委託については5000万円超
下請法では、下請代金を60日以内に支払うことや給付内容・下請代金・支払期日・支払方法等を記載した書面を交付することを事業者に義務づけるほか、給付の受領拒否・下請代金の減額・給付物の引き取り・不当に低額な下請代金・物の強制購入・役務の強制利用・取引量の減少・取引停止・原材料費の天引き等について規制しています。
③労働基準法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049
労働基準法の労働者は「事業または事務所に使用される者で賃金を支払われる者」とされています(労働基準法9条)。同法上の労働者性の判断基準は、「使用従属性」、即ち(1)指揮監督下の労働であること及び(2)報酬の労務対償性があることです。(1)については、a.仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、b.業務内容や遂行方法についての指揮監督の有無、c.勤務場所及び勤務時間の拘束性の有無、d.代替性の有無(他者や補助者を使えるか)(補強要素)に基づいて判断されます。使用従属性の判断が困難な場合は、(4)事業者性の有無(機械器具等の負担等)及び(5)発注者に対する専属性の程度も補強要素として考慮されます(労働基準法研究会報告1985年12月19日)。
フリーランスが労働基準法上の労働者に該当する場合は、賃金や労働時間等について同法による保護の対象となります。
④労働組合法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000174
労働組合法の労働者は「沈金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」とされています(労働組合法3条)。同法上の労働者性の判断基準は、(1)不可欠または枢要な労働力としての事業組織への組み入れ、(2)契約内容の一方的・定型的決定、(3)報酬の労務対価性、(4)業務の依頼に応ずべき関係及び(5)広義の指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束((4)(5)は補充的要素)とされ、(6)顕著な事業者性は労働者性を消極的に開始得る判断要素とされています(労働関係法研究会報告2011年7月)。
フリーランスが労働組合法上の労働者に該当する場合は、団体交渉権や不当労働行為等について同法による保護の対象となります。