法的支援:相続法改正(その2)

2021.07.12

法的支援

今回は、以下のポイントについて解説します。

1 配偶者の居住権を保護するための方策について(2020年4月1日施行)
⑴ 配偶者短期居住権
・配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間,引き続き無償でその建物を使用することができます。
・配偶者は,相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,居住建物の所有権を取得した者は,いつでも配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができますが,配偶者はその申入れを受けた日から6か月を経過するまでの間,引き続き無償でその建物を使用することができます。
原則として被相続人と配偶者との間で使用賃貸借契約が成立していたと推認される(最判平成8年12月17日)という手法では、第三者に居住建物が遺贈された場合や被相続人が反対の意思表示をした場合には配偶者の居住を保護できませんが、配偶者短期居住権は、このような場合であっても、配偶者の居住権を保護できます。配偶者は、第三者に居住建物を使用させるためには居住建物の所有権を取得した者の承諾を得る必要があります。

⑵ 配偶者居住権(2020年4月1日施行)
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物(被相続人が配偶者以外の第三者と共有する場合を除く)を対象として,終身又は(遺産分割協議・遺言・遺産分割審判で定める場合は)一定期間,配偶者にその使用又は収益を認めることを内容とする法定の権利が新設されました。遺産分割における選択肢の一つとして,配偶者に配偶者居住権を取得させることができますし,被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることもできます。
居住建物を取得した配偶者が(居住建物の資産価値が高いために)他の遺産を受け取れず生活資金に窮するという事態が考えられますが、例えば、居住建物土地を配偶者居住権と負担付所有権(配偶者居住権が消滅した時点の価値に基づく現在価値)に分割して他の相続人が後者を受け取ることにより、配偶者が他の遺産も受け取ることが可能になります。配偶者居住権の設定は、遺産分割又は遺贈による方法のほか、(共同相続人が合意する場合又は配偶者が希望し配偶者の生活を維持するために特に必要と家庭裁判所が認める場合には)家庭裁判所の遺産分割審判によることもできます。居住建物の所有者は配偶者に対して配偶者居住権の登記を具備する義務を負います。配偶者居住権は譲渡することができず、配偶者は、居住建物の増改築や第三者による使用収益をさせるためには居住建物の所有者の承諾を得る必要がありますが、居住建物の使用収益に必要な修繕についてはかかる承諾は不要です。